この世界線で、何かが回り始めた話。�� ページ35
．
…懐かしい、なあ。
4人に休憩さえももらえず連行されたのは、この生で私が唯一懐かしむことのできる場所。
『Distress』
スコッチを助けるために、始めたバーだ。
「潰れて、なかったんだ」
「潰さなかったんだよ…秀一がね」
思わず口から零れ落ちた声を拾ったのは、翠川さんだ。
その言葉につられて赤井さんを見れば、彼は苦笑して首を横に振った。
「俺だけじゃない。降谷くんも、翠川くんも…三人でここを残そうと決めたんだ」
数年間営業をやらずにこの場所を残しておくというのは、恐らく私が考えているよりもずっと、お金も手間もかかったはずだ。
それに、私自身の治療代も入院代も出していてくれていたのだ。
「なん、で、」
「…キミとの思い出は、ここにしかなかっただろう？」
「ああ。俺たちはこのバーでしか会わなかった…それに、」
フッと表情を優しいものにする赤井さんに、降谷さんの口調に戻った彼も鷹揚に頷く。
そして、彼らは呆然としている私を置いて定位置に座った。
…今はもう一人、小さな探偵さんが赤井さんの横に腰掛けていたが。
「ここは……俺たちを救うために作ってくれた場所、なんだろう？」
降谷さんの言葉を引き継いだのは、カウンターに頬杖をついてにっこりと笑った翠川さん。
「さ、バーのマスターも戻ったわけだしな、景気良く飲もうぜ！」
「ちょうど明日は休みだからな…まあぶんどった、とも言うが」
「ああ、俺はバーボンで頼む…どうやらはまってしまったようでね」
「あ、ボクはアイスコーヒーがいいなっ」
促されるままに、カウンターの中へ入る。
震える手でサテンのエプロンを触った。
「部屋を見てきてみろ」
と、赤井さんが優しい笑みを浮かべて言う。
その言葉に疑問を抱いたのは私だけではなかったらしく、キョトンとした瞳が4対向けられた。
しかし、それに応えることはなく、彼はジッと私に視線で指図する。
私は、一つ頷いてエプロンを手に踵を返した。
…何も変わってない。
本当にそのまま、残してくれたんだ。
多少者の位置は変わっているが、概ね変わっていないことに安堵の息を吐く。
自室として使っていた部屋に足を運ぶ。
怪我をした赤井さんを寝かせたベッドのある部屋だ。
恐らくだが、彼はこの部屋のことを指していたのだと思う。
「……これは」
ポツンと部屋の中のベットの上に置かれた紙袋。
その中をのぞけば、思わず声がこぼれた。
この世界線で、何かが回り始めた話。�あ�←この世界線で、何かが回り始めた話。��
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 507人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さち - おもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年5月22日 0時) (
レス) id: 43b8d3401a (このIDを非表示/違反報告)
Blanche*(プロフ) - 思わず泣いてしまった....... 続きが気になります!! 無理のない範囲で頑張って下さい!!!!!! 応援しております!!!!!! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 5327bf9003 (このIDを非表示/違反報告)
ナシ(プロフ) - コメント失礼します！おもしろいし、感動して何度も泣いてしまいました。続き気になります！更新頑張ってください！！ (2019年5月21日 18時) (レス) id: 9c83a487c9 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - めっちゃ面白いです！！ほんとに！！更新楽しみにしてます！ (2019年4月4日 14時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 大好きで何回も何回も読み直してます！！更新待ってます！！ (2018年9月27日 7時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2018年3月24日 0時
