この世界線で、どこかの世界線の彼らを想う話。�� ページ28
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「…零、秀一」
懐かしい記憶を思い出したと、もう久しく呼んでない名を吐き出してから思った。
ツゥ、と伝った一筋の涙はどんな意味を持つのだろう。
代わる代わる、罪悪感を、虚無感を、後悔を、懺悔を私の前で吐き出した彼ら。
時には涙を流し、唇を噛んで血を滲ませ、跡が残るほど手を強く握っていた。
私はそれを見ていることしかできなかった。
その度に思い起こされるのは、スコッチ…唯の最期。
塗装が剥がれたコンクリートの壁を赤く染め上げて、もたれかかっていた。
私がそこに辿り着いた時も、じわじわと血溜まりが広がり続けていた。
なぜかそれを見続けていることができなくて、何かを誤魔化すかのように血の気のない首筋に手を当てた。
ひんやりとしていて、すぐに手を離したのを覚えている。
部下に彼の死体を下げさせて、私は汚れることも気にせずに血溜まりの上に彼がやっていたように腰を下ろした。
まだ彼の体温が残っているような気がして、じわりと黒い服に染み込む彼の血がとても不快で。
彼が撃ち抜かれていた…いや、撃ち抜いた心臓の部分に手を当てた。
あの時の私は気づいていなかったが、今思えば私のあの行動は異質だった。
人を惜しいと思ったことも、死を疑問に思うこともあの時まではなかった。
あの時私は初めて、組織という存在に疑問を持ったのだ。
幼い頃より閉じ込められたあの組織という名の枠が、私の世界で。
彼らに会うまでは笑う必要性だって感じなかったのに。
私を『人間らしく』したのは、彼らなのだ。
食べることを、寝ることを、話すことを、笑うことを……哀しいという感情を。
教えてくれたのは、彼らだったのだ。
彼らはこんな場所に居るべき人間じゃないと思った。
もっと、私の知らないような綺麗な世界で一緒にいるべきだと思ったんだ。
「…急にどうしたんだよ。っていうか俺は呼んでくれねーの？」
仰向けになっていた私を覗き込むスコッチ。
視線をずらせば、リビングのソファで眠ってしまっていたようで。
テーブルに酒とツマミが盛られて、ライとバーボンも座っていた。
ここは、とても、あかるい。
「…唯、貴方が生きててよかった」
「零と秀一が、泣いてなくてよかった」
「貴方達が、明るい場所で三人で、笑ってくれていてよかったよ」
私は本当に、心からそう思うのだ。
この世界線で、どこかの世界線の彼女に想われる話。�、�←どこかの世界線で、全てが終わった後の告白。��
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さち - おもしろいです。続きが早く読みたいです。よろしくお願いします。 (2019年5月22日 0時) (
レス) id: 43b8d3401a (このIDを非表示/違反報告)
Blanche*(プロフ) - 思わず泣いてしまった....... 続きが気になります!! 無理のない範囲で頑張って下さい!!!!!! 応援しております!!!!!! (2019年5月21日 22時) (レス) id: 5327bf9003 (このIDを非表示/違反報告)
ナシ(プロフ) - コメント失礼します！おもしろいし、感動して何度も泣いてしまいました。続き気になります！更新頑張ってください！！ (2019年5月21日 18時) (レス) id: 9c83a487c9 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - めっちゃ面白いです！！ほんとに！！更新楽しみにしてます！ (2019年4月4日 14時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 大好きで何回も何回も読み直してます！！更新待ってます！！ (2018年9月27日 7時) (レス) id: cb719f86c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：甘夏蜜柑
| 作成日時：2018年3月24日 0時
