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八十一笑って、 ページ1




「ごめん、待った?」


「ううん、全然大丈夫…」


途中で言葉を止めた精市は、こちらを凝視して固まった

今の時刻は10時10分前、約束の時間は10時だ

人通りのそこそこ多い広場で待ち合わせをしていたが、精市は思った通り周りの目を集めていて見つけやすかった


「…精市?」


「ぁ、えぇ…っと、うん…」


珍しく言葉を吃らせた精市の頰は微かに赤く色付いていた

その頰を人差し指でかきながら精市が、小さな声でいう


「…似合ってるよ、A」


「っふふ、ありがとう…精市」


思わず漏れてしまった笑みに、精市がムッと頰を膨らました

どうやら笑ってしまったのが気に入らなかったらしい


かわいいな、全く


「…行こ、俺がエスコートしてあげる」


「期待してる」


クイ、と遠慮がちに引かれた左手

それにまた、気づかれないように笑みを浮かべて歩き出した

滅多に履かない群青色のスカートの裾がふわりと揺れる


「期待してて、ブン太の時よりもずーっと楽しい日にするよ」


「…あれは、デートじゃなかったんだけどなぁ」


クスリと笑みを零して精市の手をしっかりと握る

そうすれば、一瞬だけ目を見開いた精市は嬉しそうにキュ、と握り返してくれた









「うわ…綺麗だな」


「…A、口調が男に戻ってるよ」


「あ、…思わずね」


ふふっと控えめに笑って誤魔化してみる

しかし、精市の呆れたような視線は途絶えることがなかった


「こんな所に植物園があったなんて知らなかったよ」


「だろ?穴場なんだ、ここ」


得意げに笑う精市が連れてきてくれたのは、こぢんまりとした植物園

こぢんまりとした、と言っても種類も豊富でとても綺麗な園だった

入園料は大人料金で150円といったお手軽さ


…植物園が精市以上に似合う人はいないね、きっと


そう思うほど、色取り取りの花をバックに柔い笑顔を浮かべている精市

屋上の庭園を整備してるだけあって、豊富な知識とともに私に花の名を教えてくれる


「春真っ只中に来るととても綺麗なんだよ」


と言って指差している先を見れば、真っ白なベンチ

今は青々とした緑が取り囲んでいるが、春だと色取り取りの花が飾るらしい


「へえ…見てみたいな」


ふっと笑いながらそう零した

そうすれば、クイと袖先をひっぱられる


「ねえ、わがまま言っても良いかい?」


ふわりとした笑みを浮かべながら問う精市に当然だと頷いた



「来年の春、また一緒にここに来よう」


「…喜んで」

八十二笑って、→



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夜空。(プロフ) - もう、続きはお書きにならないんですか?ずっと楽しみに待ってます。これからも頑張ってくださいね (2018年11月10日 15時) (レス) id: 1901d2730a (このIDを非表示/違反報告)
桐枝(プロフ) - 続きを末長くお待ちしております (2018年7月14日 23時) (レス) id: 113f38a93e (このIDを非表示/違反報告)
瑞稀(プロフ) - すっごく面白いです!!!いつか更新されるのを楽しみにしてます! (2018年2月4日 16時) (レス) id: be8945b53e (このIDを非表示/違反報告)
こんぺいとう(プロフ) - とても面白かったので続きが読みたいです!更新待ってます! (2017年8月6日 17時) (レス) id: 165401a331 (このIDを非表示/違反報告)
かえる(プロフ) - 面白かったです!これからも頑張ってくださいね! (2016年8月13日 0時) (レス) id: a396c6ef54 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2015年10月31日 16時

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