【テニプリ】とても可愛いお姫様だね part 2 (ページ9)

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便箋1枚の、長いような短いような手紙

最後の方は幾つか丸く染みができていて、泣きながら書いていたことがわかった

…ねぇ、母さん

生きるということが辛くなったんでしょう？

あたしはしてダメなのに貴女はいいの？

ふらりと立ち上がる

涙は、流れなかった

目の前に広がるのはどこまでも続く青い空と人が生きる大地

ねぇ、不思議だね

貴女が死んだというのにこの世界は変わらない

変わらないどころか、気にも留めない

じゃあ、あたしがいなくなったところでこの世界は何か変わるの？

変わらないでしょ？

だったらあたしも死んでいいんじゃないのかな

辛いのは嫌

寂しいのも嫌

泣くのも嫌

もう、待つものだってない

待たれているわけでもない

光、望んでくれてありがとう

でもね？

一人もいないんだよ

あたしを認識している人が

氷帝にはいたんだ

…詩野さん

光もそうだね

でもここにはいないんだ

…あたしが悪いんだけどね

あたしは我儘だ

誰にも認識されたくないと願うのに、それを望まない

ねぇ、光

詩野さん

あたし、疲れたよ

ここから飛び降りれば楽になれるかな？

ガチャリ

世界を見渡していたあたしは、ドアの開く音に後ろを振り返る

そこには、仁王くんがいた

仁「何、やっとるんじゃ」

あたしを見て呆然と呟く仁王くんに、あたしは笑いかけた

貴「…いいえ、何も？」

死にたいと願ってました、なんて言えるわけがない

仁「…馬鹿なことしちょらんで早うこっちきんしゃい」

低い声をさらに低くしてそういった仁王くんは、眉間に皺を寄せて、こちらに近づいてきた

…怒られちゃったよ

そんな事を思いながら一歩踏み出そうとしたとき、風が強く吹いた

重心をちょうど移動させようとした時だったのでバランスが不安定だった

グラリ、と身体が傾く

それは決して仁王くんの方なんかじゃなくて

あたしがさっき見ていた方

つまり、宙に向かって

焦ったような仁王くんが視界に映る

こちらに必死に手を伸ばしているのも

やけにスローモーションで流れていく景色に、あたしは思った

＿＿＿＿＿＿＿＿＿ああ、母さんの元へ行ける？

そしてあたしは、ゆっくりと瞼を下ろした

浮遊感は、まだ続く