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貴「…足りましたか?」
食後のお茶を出しつつ、全員の顔色を伺った
不味くて体調を崩した人とかはいないらしい
幸「ああ、美味しかったよ。ご馳走様」
1番に応えてくれたのは精市さん
しかも、穏やかな笑顔だ
…クラスの女子が居たら何人か倒れてるだろうな
丸「美味かったぜぃ、A!」
次に美味しかったと言ってくれたのは丸井くん
多分、1番多くの量を食べていたのは彼だろう
そして、次々に賞賛の言葉を貰う
まさか切原くんまで言ってくれるとはね…
そっぽを向きながら、『美味かった』とだけ言った彼の耳は真っ赤だった
思わず、感謝を伝えるのが苦手なんだろうなと思って笑ってしまった
貴「皆さんはもうお風呂は済ませてきたんですよね?」
確認までにそう問いかければ、一斉に頷く彼等
貴「では、私は入ってきてしまうので、お好きなように過ごして下さい」
あたしがそう言えば、顔を赤くした人数名…
それに内心呆れながらも自室に戻って衣服を手にとる
そして、風呂場に向かった
貴「…あーあ、疲れた…」
ポツリと呟かれた言葉は敬語ではない事に気づき、慌てて耳を澄ませる
聞こえてきたのは切原くんや丸井くんの騒いでいる声だけで、今の声を聞かれていなかった事に安堵のため息を漏らした
チャポン…という水音が浴室に響く
ミルク色の入浴剤の入った風呂に身を沈めた
貴「どうしよ…」
表面から登っていく湯気を見つめながらため息をまた一つ零す
あたしは今、迷っていた
テニス部に、
入るか
入らないか
そんな、二択で
入りたい、のかもしれない
でも、入りたくない気持ちもある
自分を見せるのが怖い
もう、あの人達に突き通せる自信もない
今、彼等に何か追求されてしまったら、あたしは素で話してしまうかもしれない
貴「…あいたい」
詩野さんに、
母さんに、
…父さん、に
生きてる事を知っているのに、親に会えないなんて耐えられない
でも、自分があの人と血が繋がっているという、父さんだという明確な証拠はなくて
あたしから、縁を切ったのに
なんて弱いんだろう、あたしは
もう二度と父さんと呼ばないと決めたのに
声には出さなくても、心の中で呼んでしまったら終わりなのに
貴「…あたしに、家族は居ない」
お湯とは違う温度の何かが頰を伝った
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ひな - 凄く面白いです!読んでくうちに感動して涙が出ました! (2019年3月5日 2時) (レス) id: b401e87431 (このIDを非表示/違反報告)
ばろろん - 仁王希望で! (2015年3月30日 18時) (レス) id: 2ad4b6f1e3 (このIDを非表示/違反報告)
蘭希 - 財前オチがいいです! (2015年3月28日 19時) (レス) id: 09f1b7a4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みかりん♪ - 柳さんがいいです! (2015年3月28日 10時) (レス) id: ef8895fc8b (このIDを非表示/違反報告)
ゴマミソ - 柳くんでお願いします! (2015年3月27日 9時) (携帯から) (レス) id: 499e9b52c7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2015年2月15日 13時