検索窓
今日:9 hit、昨日:17 hit、合計:335,786 hit

36流 ページ36





貴「…足りましたか?」


食後のお茶を出しつつ、全員の顔色を伺った

不味くて体調を崩した人とかはいないらしい


幸「ああ、美味しかったよ。ご馳走様」


1番に応えてくれたのは精市さん

しかも、穏やかな笑顔だ


…クラスの女子が居たら何人か倒れてるだろうな


丸「美味かったぜぃ、A!」


次に美味しかったと言ってくれたのは丸井くん

多分、1番多くの量を食べていたのは彼だろう

そして、次々に賞賛の言葉を貰う


まさか切原くんまで言ってくれるとはね…


そっぽを向きながら、『美味かった』とだけ言った彼の耳は真っ赤だった

思わず、感謝を伝えるのが苦手なんだろうなと思って笑ってしまった


貴「皆さんはもうお風呂は済ませてきたんですよね?」


確認までにそう問いかければ、一斉に頷く彼等


貴「では、私は入ってきてしまうので、お好きなように過ごして下さい」


あたしがそう言えば、顔を赤くした人数名…

それに内心呆れながらも自室に戻って衣服を手にとる

そして、風呂場に向かった









貴「…あーあ、疲れた…」


ポツリと呟かれた言葉は敬語ではない事に気づき、慌てて耳を澄ませる

聞こえてきたのは切原くんや丸井くんの騒いでいる声だけで、今の声を聞かれていなかった事に安堵のため息を漏らした

チャポン…という水音が浴室に響く

ミルク色の入浴剤の入った風呂に身を沈めた


貴「どうしよ…」


表面から登っていく湯気を見つめながらため息をまた一つ零す

あたしは今、迷っていた



テニス部に、

入るか

入らないか



そんな、二択で


入りたい、のかもしれない

でも、入りたくない気持ちもある


自分を見せるのが怖い

もう、あの人達に突き通せる自信もない

今、彼等に何か追求されてしまったら、あたしは素で話してしまうかもしれない


貴「…あいたい」


詩野さんに、


母さんに、





…父さん、に





生きてる事を知っているのに、親に会えないなんて耐えられない

でも、自分があの人と血が繋がっているという、父さんだという明確な証拠はなくて


あたしから、縁を切ったのに

なんて弱いんだろう、あたしは


もう二度と父さんと呼ばないと決めたのに

声には出さなくても、心の中で呼んでしまったら終わりなのに


貴「…あたしに、家族は居ない」


お湯とは違う温度の何かが頰を伝った

37流→←35流



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (250 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
493人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ひな - 凄く面白いです!読んでくうちに感動して涙が出ました! (2019年3月5日 2時) (レス) id: b401e87431 (このIDを非表示/違反報告)
ばろろん - 仁王希望で! (2015年3月30日 18時) (レス) id: 2ad4b6f1e3 (このIDを非表示/違反報告)
蘭希 - 財前オチがいいです! (2015年3月28日 19時) (レス) id: 09f1b7a4a3 (このIDを非表示/違反報告)
みかりん♪ - 柳さんがいいです! (2015年3月28日 10時) (レス) id: ef8895fc8b (このIDを非表示/違反報告)
ゴマミソ - 柳くんでお願いします! (2015年3月27日 9時) (携帯から) (レス) id: 499e9b52c7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:甘夏蜜柑 | 作成日時:2015年2月15日 13時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。