Statice ~linked in the future~ (ページ35)

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case 6 ページ35

医者は人を助けるのが仕事だ。
たとえそれがどんな人物だとしても、私は頑張って生きたいと思う人を助けたい。
私はそのために医者になったのだから。

朝から小児科へコンサルできていた私に、耕作から急患が来ると連絡が入った。私はその急患の名前を聞いて、持っていたファイルを落としかけた。

「A、落ち着いて聞いてくれ。Aの家族が今から運ばれてくる」
「うそ…」
「本当だ」

耕作との電話を切って、初療室へと走った。丁度、お父さんと兄の処置が始まっていた。お父さんの隣には、犯人と思しき人物がいた。

「耕作、お父さんよろしく。私こっちやるから」
「あぁ」

自死を試みたと思わしき首元の傷を確認すると、そんなに深くはなく、縫合を開始した。自分で死のうとするほど、怖いものはないと思う。犯人であるこの人も、多分そうなんだろう。生きようとしている。自分の家族を傷付けたのは許せない。

でも、私は医者だから。

「このまま様子見よう。個室空けてある？警察の方は？」
「今、外にいる被害者の方とお話されています」
「個室空けてあります」
「じゃあそっちに運んでもらって」

私はガウンを脱いで、そのまま警察の方の元へと来た。腕に包帯を巻いた義兄と、怪我のない姉ふたり、夢月とお母さんを見て、少しだけほっとした。お父さんは絶対に大丈夫だ。なんせ、耕作たちが処置をしてくれているのだから。

「すいません」
「はい？」
「犯人の方の処置が終わりました。今はICU、集中治療室の個室にいます」
「分かりました」

警察の方が連絡のために離れる。私は無事でよかったと家族に声をかけた。

「A…お父さんと、お兄は」
「処置は終わりました。今はICUにいます」
「耕作くん。貴方が処置してくれたなら安心ね」
「連絡来た時、心臓止まると思ったんだから…」

少し話をしたあと、私は耕作と医局へと戻った。大丈夫だ、とそっと頭を撫でてくれた。

「ありがと、」
「あぁ」

ICUにはお母さんと美月さんがいる。夢月は姉さんとその様子を外から見ていた。夢月と姉さんにジュースを手渡した。

医局に戻り、1人になるとどうしようもない安堵感と、不安が押し寄せ、涙が溢れた。