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ぐいっとタートルネックのインナーを上まであげて、当直室から出た。歩いていると、藤川に声をかけられた。
「A！大丈夫か？」
「大丈夫大丈夫」
「なら良かった！あ、美琴ちゃんが」
「美琴ちゃんがどうしたの？」
「有栖先生が目覚めたら呼んでっていってた」
OK、と藤川にOKサインを指で作りながら返して、美琴ちゃんの病室へと向かった。一般病棟にある美琴ちゃんの病室にいくと、ベットにいる美琴ちゃんを囲む女の子3人が見えた。入るのも悪いかな、と思い、その場に立っていた。そんな私に男の子が声をかけてきた。
「この病室に長妻美琴がいるんですよね」
「そうだよ。美琴ちゃんのお友達？」
「あっ、か、彼氏です」
「彼氏くんか。でも今お取り込み中らしいんだよね」
彼氏くんは永野琉央くんと言うらしい。琉央くんと私が入るかどうかを悩んでいると、病室から声が聞こえた。
『なんで美琴が琉央くんと付き合ってるのよ！』
『事故にあって良かったね』
『お父さん亡くなったんでしょ？桜から琉央くんとるからよ！泥棒猫』
聞くに耐えない、悪口が私の耳に入る。美琴ちゃんはただでさえ心が弱っているはずなのに。ちくりと、昔の記憶がよぎり私はがらりとわざと大きな音を立てて病室に入った。
「美琴ちゃん、大丈夫？」
「あ、はい」
美琴ちゃんは目に涙を貯めながら、私を見て頷いた。私と琉央くんを見た女子3人は、顔を真っ青にして立っていた。
「ねぇ、君たち自分のした事わかってる？」
「美琴が、琉央くんを奪うから…」
「僕が誰を選ぼうと相川さんには関係ないよね。僕は美琴を選んだ。僕の彼女のこと悪くいう人は嫌いだよ。僕」
琉央くんの言った言葉で、リーダーらしい女の子は泣きながら走って出ていった。そのあとを続いて全員出ていった。
「前までは、仲良い友達だったんだけどな」
「そういうこともあるよ」
「そっか…あ、有栖先生大丈夫ですか？お母さんが…」
美琴ちゃんが申し訳なさそうに眉を下げて私を見る。私は大丈夫だよ、と笑いながら美琴ちゃんの頭を撫でた。
「早く良くなってね」
美琴ちゃんは頷いて笑ってくれた。私は琉央くんにあとを任せて、美琴ちゃんの病室をあとにした。
可愛らしいカップルだなぁと微笑ましく思いながら、医局に戻った。
「はー、疲れた。あ、有栖。今日暇でしょ？」
「暇だけど、どうしたの」
「冴島と藤川の婚約祝いをめぐり愛でやるから来て」
「まってそんな話聞いてない！！」
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作者名：ろみー | 作者ホームページ：
作成日時：2018年6月13日 19時
