Statice ~linked in the future~ (ページ16)

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(side 藍沢)

「藍沢！有栖！」
「Aはここにはいない。どうした」
「さっきの患者、佐藤さんがあんたらのこと呼んでる」
「担当医はお前だろ、緋山」

そうだけど、と語尾を強めながら緋山が言う。医局に戻ってきたAの腕を掴み、そのままICUに入った。え、何事？と首を傾げるAに説明をしながら、その患者の元へと行った。

「…先生、ゆうくんはまだ起きないの？」
「鈴木さんのことですね。まだ起きませんが、そろそろ目を覚まされると思いますよ」
「本当？早く起きないかな」

Aが佐藤さんへの対応をしているうちに、俺は鈴木さんの機械と様態の確認をする。この様子なら、今日中には目が覚めると思う。

「今日ね、私とゆうくんの記念日で、告白された海に行こうとしてたの。そしたらこんな事故に巻き込まれて」
「そうなんですか…鈴木さんもはやく目が覚めるといいですね」
「うん。ね、先生ってあのかっこいい先生と付き合ってるの？」
「いえ、付き合っていないですよ」
「付き合ってないの？恋人って素敵だよ」
「そうなんですか？」
「うん。最初全然そんな気なかったのに、いつの間にか大好きになって、たくさんの思い出作って…赤の他人なのに、幸せになれる。ね、先生、耳貸して」

Aが佐藤さんの口元に耳を近づける。何を話しているかは、全く聞こえないが、Aの耳が真っ赤だったのは分かった。1度医局に戻ろうと思い、Aに声をかけた。

「A」
「あ、今行く」

医局に戻ると、小さな子供の声と橘先生の声が聞こえた。

「有栖、可愛らしいお客さんが来てるぞ」
「ありすせんせー！」
「せんせー！」
「明日退院するので、その前に挨拶したいっていわれちゃって。八巻先生にここに移動されたと聞いたので」

男の子と女の子の双子とその双子を連れた母親。Aはにこやかに笑いながらその3人を連れて、空き部屋へと入った。

「あの子達はな、有栖に助けられたんだ。有栖の血液型、わかるだろ？AB型RH-。男の子の方がそれで有栖が輸血した」

飛んだお人好しだよ、有栖は。と橘先生が笑う。俺もそれに同感して頷いた。