Statice ~linked in the future~ (ページ11)

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「有栖先生！ICUの佐藤さんが急変しました！意識レベル落ちてます」
「藍沢先生」
「エコー…大動脈解離、心タンポナーデか。冴島、A」
「メス」
「はい」
「こっち抑えとく」

私が抑えてる間に心嚢穿刺をして、血圧が戻った。そのまま耕作が縫合して、私は手袋を外して、その場をあとにした。医局に戻り、コーヒーを片手に理央くんの眠るソファーに近付く。

「んぅ…Aせんせー？」
「起こしちゃった？理央くんベットで寝よっか」

コーヒーをテーブルに置き、理央くんを抱き上げる。寂しい筈なのに弱音も吐かず、泣きもしない理央くんに心が痛む。

「おやすみ」

抱っこをしているうちに寝てしまった理央くんを仮眠室のベットに寝かせて、当直室をあとにした。コーヒーは冷めちゃったかな、なんて思っていたら、医局からフェローの声が聞こえた。

『有栖先生も何考えてんだろうな、患者の子供預かるなんて』
『えー、いい人じゃん有栖先生』

「入らないのか？」
「タイミング悪いよ、耕作」

名取先生の顔が強ばる。まぁ、言われ慣れているからなんとも感じないんだけど。

「はは、気にしてないからいいよ。言われ慣れているし」

カルテを整理して、書類を纏める。明日は朝一番に理央くんにご飯を食べさせて、玲央さんとご家族のお話し合いをして、八代さんの状態が良くなっていたら一般病棟に移動できるように申請の書類を書かなきゃなぁ。
そんなことを考えていたら、泣き声が聞こえてきた。あー、理央くん泣いちゃったか。

「よしよし、どうしたの？」
「せんせ、いなくなんないで」

ごめんね、と頭を撫でながら抱きしめてあげる。この子にもっと必要なのは愛情だと私は思う。ごめん、と目で謝って理央くんを医局に連れてくる。

「ここにはA以外にもたくさんの大人がいる。だから安心して寝るんだ」
「ん…ぎゅーして」

耕作が理央くんを抱き上げる。理央くんは耕作に抱きしめられて安心したのか、また眠りについた。お父さんとずっと一緒だったもんね。だから父親のような耕作に安心感を覚えたのだろう。

「ありがと」
「あぁ。大丈夫か？」
「私は大丈夫」
「先程言えなかったんだが、松田さんは退形成星細胞腫で、手術は俺が執刀する。あと松田さんとの話し合い俺も参加させてもらうことになった。」
「わかった」

夜が明けていく。
小さな星がひとつ夜空を流れた。