バッドエンドでも ページ32
「んーーっ、終わった……」
事務所にお呼ばれをして休日だというのに出勤。やってらんねぇな。
「あれ、帆乃花さんじゃないですか」
「こんにちは」
「今日は万葵さんはいらっしゃらないんですね」
事務所内だと後輩にあたるササキ君。今はモデルの子を担当しているらしい。
「仕事の方はどう？ 」
「いや〜、中々難しいですね……」
「PRが命だもんね、SNSも大変か」
「はい……今のキャパは埋まるんですけどグレードを上げる目処がまだ立ってなくて……」
眉間にシワが寄っている。目元の隈を見るに、今は大事な時期らしい。
「万葵さんはやっぱり天才ですね」
「えっ？ 」
「先日もドラマの主役が決まったらしいじゃないですか。デビューしてから才能が開花し続けるなんて、そんなの凄すぎますよ。」
「才能……」
この場合、才能ってどんなことを指すのだろう。
「ササキ君の子もそうじゃないの？ アイドルって相当大変な仕事だと思うんだけど」
「確かにそうなんですけど、アイドルなんて万葵さんとは比べ物にならないですよ。」
「ふぅん……」
「それに、何をしても完璧にこなすのに、共演者とは必要以上に距離を詰めない。高嶺の花だってもっぱら話題です。」
「あ、でも、ここ数年で笑顔が増えたって話も聞きます。ウチのも、話しかけてもらった！って自慢げに話してましたし。」
「そうなんだ」
「最近またすごく話題になってますよね、万葵さん。流石だなぁ……」
何が言いたい？
「ササキ君。きみ、もしかして万葵のマネージャーになりたいの？ 」
「……、え」
「違うの？ やけに万葵のことを熱く語るものだから、てっきりそうなのかと思っちゃった」
「いやいや、そんなこと、」
まぁ、私以外に務まるわけないんだけど。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 22時
