犯人の目処 ページ7
帆乃花には黙っておこうと思った。いや、正確には、聞いてくるまで話さないでおこうと思っていた。彼女も彼女で家の家事や語学の勉強、マネージメント業務に追われている身で、口が裂けても暇人なんてものではなかったから。
そんな決意は車に乗って3秒で崩壊してしまったのだけれど。
「右足、怪我したでしょ」
「え、あうん。」
「結構出血してそう、帰ったら全部話して」
「あ、はい……」
彼女の観察眼は凄まじかった。
歩き方の違和感で怪我をしていることを察知し、いつの間にか手のひらについてしまっていた微量の血を見つけてはただ事ではないことを感じ取ったらしい。この人に私は一生隠し事はできないのだろう。
「まーたアイツ？もうストーカーじゃん、」
「日本だったら事務所がなんとかしてくれたけど、海外となるとちょっと難しいよね」
「時間はかかると思う。アカデミー講師としてきてるから手続きが面倒なんだよな」
Kがやってきてから、なるべく録音をするようにしていた。これだけじゃ弱いかもしれないけど、過去の一件も含めれば罰則条件は満たしているはずだ。だから私は別にKのことを気にしているわけじゃない。問題は別にあった。
「シューズの件はアイツじゃないと思う」
「え、なんで？前にも同じようなことがあったんでしょ？」
「そうなんだけど、なんか、違うと思う」
「勘ってこと？」
「アイツってさ、私をアイドルにすることだけが目的なの。だから私に暴力とか怪我になりそうなことは絶対にしないんだよ
「ましてや今回の件なんて、最悪踊れなくなるかもしれない。そんなこと、アイツがするわけがないでしょ、」
これは私の経験談。どんなに私が反抗しても、Kは頭を叩くことさえしてこなかった。暴力の代わりに言葉の暴力。面の皮が厚いKは、私が反抗すればする分だけ私の偽物の悪評を広めていった。精神攻撃が彼の得意技。それが定石だ。
「じゃあ誰がやったと思うの？」
「私が前に嫌がらせを受けていた時とやり方がまるで同じ。……これってどういうことだと思う？」
「んー、……まさか、同じ人？」
「そう。だからね、あの時現場にいた
「……ちょっとしばらく寝室籠るわ、」
「夜食は？」
「いる」
「よく食べるなぁ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 369人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 21時
