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時間が止まってしまったように体が動かない。
どうしてここにいるの、忙しいんじゃないの。
「、翔太」
ラウンジとカウンターを繋ぐ扉の奥に居たのは翔太。変装のへの字もない、ただマスクをしているだけの姿でこちらをじっと見つめていた。いままで見たことないような、最高に優しい瞳で。
「ほら、早く行きなよ」
「……知ってたの、」
「そりゃー私の弟もいますからね」
「へ？ 」
「ほら、あそこにいる大所帯、見覚えしかないでしょ」
背中を押されて扉を通る。すると、目の前にある衝撃で見えていなかった周りの光景が目に入ってきて。
「着いてくんなって言ったんだけどな」
「ぇ、今日お仕事じゃ、」
「みんな休み、じゃないけど、仕事の合間にわざわざ着いてきたっぽい」
ん、と私の鞄をひったくって手を握られる。最後に繋いだ時よりも大きくなった手。たくさんのマメで硬くなった皮膚に、彼の頑張りがつまってるんだろう。随分と男らしい手つきになったものだ。
「あ、ちょっと待って、翔太。あんた変装は」
「んなもん、もう要らねえだろ」
「はぁ？ 何、」
「おーい！ Aちゃ〜ん！！！ 」
「あっ！ しょっぴー！ 手繋いでイチャイチャしとる！！ 」
「別にいいでしょ家族なんだから」
良い意味で騒がしい8人組。ただでさえデカいのに、この人数はもっと迫力がすごい。何回会っても慣れないなぁ。
「わざわざ来てくれたんだ、……ありがとう」
「そりゃ来るで！！ 三ヶ月ぶりのAちゃんやもん！ 」
「しょっぴーなんか待ちきれなくて留守番してるワンちゃんみたいに外で待ってたんだよー！ 」
「いくら呼んでも来なくてさ〜」
「おい、余計なこと言うな」
「お姉ちゃん大好きっ子だからね、翔太は」
「そんなの舘さんもそうでしょ。ずっとソワソワしてたじゃん」
「あんなに落ち着きのない舘さん見たの初めてだった」
「これが幼なじみってやつか……」
「どっちかって言うと家族じゃない？ 」
怒涛のマシンガントーク。個室の待合室の中とはいえ、ずっとここにいるのは彼ら的にはきっとよろしくないんだろう。というかわざわざなんでここで待ってたんだ。
「ほら、そろそろ行こう。まだ仕事あるんでしょ、」
「あ〜……」
「……何？ さっきからなんでそんな煮え切らない返事ばっかするの？ 」
「俺らね、Aちゃんに謝んないといけなくて……」
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 21時
