来ちゃった ページ36
「さっっっっっっむ」
「Aは寒がりすぎ、あっちのが寒かったよ」
「万年子ども体温のあんたには分からないでしょうね！」
13時間どころでは収まらないフライトを終えて、外の空気を思い切り吸い込む。飛行機はありがたいことに事務所が良い席をとってくれていたので不快な気分とかは特に無かったのだが、乗り継ぎの数とその待ち時間が辛かった。アメリカ国内で2回乗り継ぎ、韓国で1回乗り継いだ上に、中には9時間もの長尺を空港で待ったこともある。暇つぶしの仕方がまさかのSwitchしかないって気づいたときは気を失うかと思ったよね。マリオパーティを一体何周したんだろう。
「にしてもさ、あんなにファンの方がいるとは思わなかった」
「フットワークの軽さが凄い。朝からあんなにフラッシュ浴びること中々ないでしょ」
どこの空港でも出待ちをしてくれていたファンの数が凄かった。最初は帰省ラッシュか何かなのかな？って思って何食わぬ顔で素通りしようとしたら「ツムギ〜！！！ 」という声を筆頭にカメラのシャッター音がわらわらと。事務所が突然ボディーガードみたいな人を増やした理由ってこの事かぁ〜ってお手振りしながら他人事のように思ってた。わざわざありがたいことですよ、本当に。なんかうちわ持ってた人もいて、ジャニーズってこんな気持ちなんだ……って擬似体験も出来ました。ありがとう。
「日本でも凄かったりして〜」
「明確な時間が私たちでもあやふやなのに集まれるわけないでしょ、何をそんなにワクワクしてるの」
「え、あ〜、なるほどね、そっか」
「何その顔。タイプの男の人でも見つけた？ 」
「違います〜〜〜！！！ 」
ニマニマ、いやニチャニチャが正しいか。マスクをしていてもわかるニヤつき。それ人前で絶対見せんなよ。
先導してくれるスタッフの方について行き、改札を抜けてラウンジの中へ。中は外よりも暖かくて、ようやく肩の力が抜けた感じがした。そうか、もう日本に帰ってきたんだ。スマホのロック画面には11:53の文字。2日と4時間ちょっとの長旅はいよいよ終わりを迎えた。
「姉ちゃん」
えっ。
いるはずのない声が聞こえて、反射的に声のした方に顔を上げた。
「おかえり、姉ちゃん」
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 21時
