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この三ヶ月、本当に頑張った。
クソみたいな人生を変えるために、なんだってやった。
延期されていた撮影が12月に振替になったと知って、レッスン終わりの疲れた体のまま日本に帰国したことだってあった。さすがの過密スケジュールに、ニューヨークに戻ってきた途端に40度の発熱。それでも三時間の睡眠で37度まで下げて、レッスンには普段通りに参加した。片道13時間はそれだけ身体への負担がデカすぎたのだ。
NAGPのオーディション当日は周囲からの白い目に耐えることにとにかく必死だった。ここ何年も日本人が合格したという知らせはない。無謀な挑戦だと、嘲られていたのだろう。それでも私は息のしやすい人生のために、全力投球を投げ込んだ。
なにより、過去から開放されたのがすごく嬉しかった。
セクハラ男にパワハラ男。私の人生にこんなくだらないトラウマなんて必要ない。そう思ってはいても、男性に対して怖いと思うことは変えられないし、スタッフとの他愛ない会話でもいつ怒られるのだろうと背筋を伸ばす癖は抜けない。
それでもアイツらが地獄に落ちているのなら、それだけで私は救われる。因果応報、身から出た錆。正直者が馬鹿を見る世界なんてクソくらえだ。
「――ようやく泣いた。」
出かけたはずの声の主がすぐ近くにいた。温い身体をそっとくっつけて、溢れて止まらない涙を余計に促進させていく。
「Aが堪えてる顔、見てらんなかったよ」
「……そ」
「前にしたビデオ通話のときも。おかげで翔太がうるさくてかなわないんだから」
「…………」
「帰ったら話してあげな、全部じゃなくていいから、」
「…うん」
「……よく頑張ったね。よく戦ったよ。」
「…………ん゛、」
「絶対成功させよう、Aのデビュー舞台。世界中がAに釘付けになるように、あと少しだけ頑張ろう」
「、うん」
「歌舞伎もライブも、見ようね。今度こそ。」
「……うん、」
それからミュージカルは無事に大成功に終わり、メディアに追われる日々の中、なかなか行けていなかった観光を9日間楽しんだ。もちろんカメラ目線は忘れずに。
そうして2月25日。予定通り、私と帆乃花は日本に帰国した。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 21時
