どうして ページ13
あれから数週間。本番まであと一週間というところまでやってきた。稽古もいよいよ本詰めで、ハードさは日を追う事に増すばかり。それに加えて、理由の分からない嫌がらせに耐える日々が続いていた。
そんなある日、朝からKに呼ばれた。また抜き打ちですか？ とクソデカため息を心の中で零しながら彼についていくと、人気のない場所までやってきた。
「万葵、お前どういうつもりだ？ 」
「？ なんのことですか？ 」
「しらばっくれるな。
「……あぁ、」
十数年前とは違う分岐点。恋愛ゲームだったら裏ストーリーとでもいうのだろうか、こんな恋愛ゲームなんてあったらたまったもんじゃないのだけど。そもそも告白シーンに埃被ったほの暗いオフィスなんてゴメンだ。
「アイツがお前をいじめてること、気づいてるんだろ」
「……あなたも気づいてたんですね。昔みたいに。」
「、今あの時のことは関係ないだろ！ 」
「そうですね。お互い大人になりましたし、水に流しましょ、“元”マネージャーさん。」
眉間にシワが寄っている。私が言い返すだけでそんなピリピリしてるんじゃ、この先やっていけませんよ。
「気づいてるのにどうして今もアイツとつるんでるんだ」
「いじめの犯人だぞ？ さっさと事務所なりなんなりに報告すれば、」
そうだ、その詰めの甘さも直さないと。蝶よ花よと育てられた箱庭育ちのお前には一生かかっても無理だろうけど。
「先生。今そんなことしたら色んなところに迷惑がかかるんです。」
「はぁ？ あんな小娘ひとりで、――」
「あの子は今回の舞台のたった一人だけのヒロイン。そんな子が今から降板したら、舞台はどうなるんですか？ 」
「私みたいな脇役ならまだしも、ヒロインは物語の主軸。今から新しい配役をして練習なんて、普通じゃ無理なんです」
帆乃花が酔いつぶれた後、彼女のバッグから一枚の紙を見つけた。それは私が提案していた資料で、あの日の現場についていた
上から三番目。その欄には“アンナ”とハッキリと書かれていた。
「でも、お前になら出来るだろ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 369人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月18日 21時
