・ ページ41
わたしは、好きな曲を聞かれるのがすこしだけ苦手。その時の自分の感情が丸裸になってしまいそうで、言うのを躊躇ってしまう。ただ、アーティストに罪は無いから、代わりにアーティストの名前を答えるようにしている。
「ね、照くん、覚えてる？ 」
「なに？ 」
「昔わたしが作った歌詞に、メロディーを創ってくれたこと」
「、覚えてる」
明確には歌詞じゃなくて、私が感じたこととか考えたことを長ったらしく書き留めただけの文字列。本を読んでいた影響なのか、やけに物語文ぽくなっていたから、それを読んだ照くんが歌詞だと勘違いしてしまったのだった。
「あんまり覚えてないんだけど、楽しかったのは覚えてるんだよね」
「即興だったし、覚えてる方が怖いよ」
「んふふ、そっか」
当然そこには日々の不満も溜まっていたから、綺麗な歌詞とはお世辞にも言えない。ただその方が人間味があるって照くんに言われた。私のこと、なんだと思ってたんだろう。
「まだあんまり交流もなかったのに、突然デュエットって、どうしちゃったんだろうね」
「……共感したから」
「え？ 何か言った？ 」
「何も」
おまたせしました。
そうして店員さんが持ってきてくれた、いちごのショートケーキとサンドイッチ。そして飲み物にはキャラメルラテとモカが。
「あ、逆じゃない」
「ん？ 」
「いつもAとこういうところに来ると、いつも逆に置かれるから」
「ああ、そっか」
ふふふ、と嬉しそうに笑う彼。控えめに言うけどめっちゃ可愛い。良かったな、たーんと食えよ。
「そーいえば、可愛いことがあったの」
「……可愛い？ 」
「照くんも可愛いんだけどね、この前――」
「え？ 」
ついこの間、私は阿部ちゃんと勉強会をした。もちろん、楽しかったしまたやりたいなとは本心で思ってる。
だけどその後が問題だった。グループラインである。
いつ撮ったの？っていう写真が載せられていた。まじでいつ撮ったんだあれ。
まぁそれはいつもの事だから置いといて、なぜ私がその事を知ったのかと言うと、彼のシンメが理由だった。
「佐久間くんね、“俺も行きたい！”って送ってきたの」
「ははは、いいそう」
「それもね？ 理由が“阿部ちゃんのお助けしたい！”だったの」
いやいや可愛いすぎることこの上ない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 612人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
