バレンタイン ページ26
「バナナ細切れになっちゃった！！ 」
「輪切りって言ったよね？ 」
「綺麗に切ってあげたかっただけなのに……」
「力の加減ができない悲しきモンスターみたいな言い方すんな」
本日は、せっかくシェアハウスしてんだからバレンタイン作ろう！と早めのバレンタイン。当日は公演でそんな暇がないので日曜日の今日に作ることになった。
「千切りバナナでもいっか！」
「ダメ。それ潰すから別のやつ切って」
「私潰す方が良くない？ 」
「練習と思って頑張ろ」
作るのはバナナのパウンドケーキ。前に帆乃花に作ったのがお気に入りだったらしく、速攻決まった。ホットケーキミックスならぬパンケーキミックスを使うから誰でも簡単に作れて美味しい。難しいことはなんにもない、はずだったのに。
「指出さない！ 」
「ウッ……」
「よそ見しないでゆっくり丁寧に切って」
「ムズムズする……」
じっとしたりゆっくり動くことが苦手な帆乃花は何事も素早くやろうとする。いつもだったら助かるなぁぐらいにしか思わないのだけど、料理となるとまた別だ。慣れてない癖に早くやろうとして指をスパスパ切っちゃうのは大変よろしくない。
「切れたぁ……」
「じゃあそれにレモンちょっと搾って」
「レモン？ 」
「変色しないように」
私は私で材料の準備。あくまで言い出しっぺは帆乃花なので私はお手伝いだけ。それに帆乃花なら計らずに適当にポンポンポンポンぶち込む未来しか見えないから。
「出来たよー」
「次はこれ全部混ぜて」
「……ちょっと多くない？ 」
「そんなことない」
パンケーキミックスに牛乳と砂糖、卵に溶かしバター、そして潰しておいたバナナ。
混ぜるのに力が必要だけどそれくらいしか大変なことは無い。粉っぽさがなくなるまで混ぜてもらって型に流すだけ。とーっても簡単。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
