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「阿部は？ 清純派アイドル」
「爽やかすぎるわ」
「へぇ」
阿部ちゃんはもう違う。甘酸っぱい恋専門家のあの子はきっと心の痛みじゃなくて癒しを届けてくれるんだろう。大人なのにどこか健気で幼さのある、そんな恋。
違う違う。そもそもが論外だって。
「恋愛ドラマやるならあんた達とはやりたくない」
「……どうして？ 」
「なんか、気まずい」
「Aにもそんな感情があるんだね」
「失礼な」
帆乃花より遅く知り合った彼らだけど、感覚は弟の友だち。気づいたら家に遊びに来てる系の友だち。そんな子達と疑似恋愛なんて小っ恥ずかしいにも程があるわ。
「北斗とはいいんだ」
「あー、アイツは何も考えなくていいから楽」
「ふうん」
「でもずっと後ろをついてこられるのは困るな」
松村はなんかペットって感じ。主従とかじゃなくて、あいつの言動がゴールデンレトリバーみたいってこと。それに惹き込まれる芝居をするからこっちも勉強になったりする。映画やるんだっけ、今度。
「共演者繋がりで言うと櫻井さんにはすごくお世話になったな」
「『ネメシス』だっけ」
「いや『家族ゲーム』が最初かな」
当時、私は日本アカデミー賞を頂いたころで、櫻井さんにもお祝いしていただいた。「その歳ですごいねぇ」って言われたけど比べるまでもなく貴方の方がとんでもなくすごいですよって。
「マネージャーの様子がおかしいことに櫻井さんも気づいたらしくてね、現場が同じだった時は終始気にかけてくださってたの」
「そうだったんだ」
「脳天気な私は、大丈夫ですよ〜って軽く流してたんだけどね」
恋は盲目とは言わないが、弱ってるところに付け込まれたのは最悪だった。主観だとその善意が偽物なのか本物なのかの見分けが難しいから。
「今だから言えるけど、私がずっと黒髪ロングだったのってアイツの影響だから」
ブラウンに染まった髪を一束撫でる。
「ヘアカタログを眺めてたら急に早口でまくしたてられてね、今思うと他人の髪の毛に口出しすんなって話なんだけど」
茶髪なんて品の無い女がするものだ
女としての唯一の武器を切るなんて恥さらしだ
お前には黒髪しか似合わない
きっも
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
