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「そのおかげで異常にすぐ気づけたんだよ、今日を迎えられたのだって帆乃のおかげ」
それでも帆乃は相談ができるタイプで、去年も今も帆乃の声掛けによって俺らは動くことができた。
去年は俺が手料理を振舞って、翔太はその料理と材料のデリバリー。今は新年の集まりと称してAちゃんにご飯を食べさせる会を決行。全て帆乃が教えてくれないと出来ないことだった。
「あとは帆乃のガス抜きだね」
「えっ？ 」
「
「それならAに――」
「限界近くなると爆食する癖、でてるから」
Aちゃんが後でつまめるように多めに作ったハンバーグはあっという間に無くなった。帆乃が山ほど食べたからだ。元々大食らいなのもあるけど、俺よりも食べる量が多いのは普通じゃない。少し目を離した隙に二人してここまで溜め込んでいるんじゃ、幸先が不安すぎる。
「自己管理が一番でしょ、そんなんじゃ他人をマネジメントする資格ないよ」
「あぁ……そっか、」
「明日も俺休みだから姉貴の好きな事しよう」
どっちが歳上なのか。
マネージャーになるとこうも盲目になってしまうのかという現実に寒気がする。帆乃は良い意味でも悪い意味でも純粋で染まりやすい上、反面教師が周囲に多すぎた。それを素直にそのまま見習ってしまう前に無理やり腕を引っ張るべきだったのに。
「眠いでしょ、寝てていいよ」
「……洗い物するから」
「覚えてたんだ」
「うるさ」
水の流れる音とスポンジと金属が擦れる音。真剣な顔をしてキッチンに立つ帆乃を見ると子どもの頃をよく思い出す。楽しそうに母さんの手伝いをする姉貴と、それをダイニングからじっと見ていた俺。
たまに、俺がジャニーズに入っていなかったら、なんていうタラレバを考えることがあった。それでも帆乃は幼なじみのために底の見えない闇に飛び込んで行くんだろう。苦しんでいる人は誰だって助けないとしょうがない、綺麗な性格の持ち主だから。
「終わった！ 」
「……、くそ」
「ん？ なんか言った？ 」
「ううん、なんでもない。早く寝よう」
幼なじみの間にさえ入り込めない、ただの弟に、価値なんてあるのだろうか。
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作者名：風呂 | 作成日時：2023年1月29日 15時
