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story.46 ページ2

海兵達に一斉に銃口を向けられたことによりゾロの脳裏に過去の出来事が過ぎった。
「……!!!」
おれは…こんな所で死ぬ訳にはいかねェんだ…………!!!
おれにはやらなきゃいけねェ事があるんだ!!!
約束したんだ………!!





「や―――っ」
バシッという鋭い音が響き、少年は倒れる。
「勝者、くいな!! 二刀流のゾロの敗け!!」
審判の声と共に少年ゾロは悔しそうに顔を歪めながら起き上がった。
「これでゾロはくいなに0勝2000敗だぞ。あーあ」
「フンっ!! なんて情けないの? 相変わらず弱いわね……男のくせに!!」
竹刀の先をゾロに向けたまま、今しがたゾロに勝った整った顔立ちの少女くいなは笑う。
「おい!! ゾロは弱くねェぞ!!」
「そうだ!! おれ達の道場で一番強えんだぞ!」
「大人も入れて一番だぞ!!」
ゾロと同年代の少年たちはそう言って喚くが、”ゾロがくいなに敗けた”という事実は変わらない。きっぱりと吐き捨てて道場へと戻って行ってしまった。
「あっそ、でも私より弱いじゃない。剣2本使えようが弱い奴は弱いのよ! 負け犬は黙ってなさい」
「くそっ」
「くいなの奴ムカつくよなーっ!!」
「本当腹立つ女だぜ!! 道場の先生の娘だからっていばりやがって」
くいなの言い草が気に喰わなかったのか少年たちがそうやって騒いでいると、カラカラと笑いながら近づいてくる大人が一人。
「また敗けちゃったか。ゾロ、君は強いのにねェ」
「先生!」
優しそうな笑顔の先生は生徒達にくいなに秘密の特訓でもしてるんじゃないかと詰め寄られるが、そんなことはしないと笑顔で否定する。
道場の師範としてそれは当然のことだが、その否定は同時にゾロがくいなに実力で勝てないのだという事を小さな少年に知らしめることになった。
「くそォ!!! なんでおれがあんな女なんかに勝てねェんだよ!!!」
八つ当たりなのか何処にも持っていけない悔しさをぶつけるためなのか、竹刀を地面に投げつけるゾロに先生は困ったように笑いながら嗜める。
「でもゾロ、くいなは君より少し年上だし」
「おれは大人にでも勝てたんだ!」
先生の言葉にがーっと牙を剥くゾロ。くいなに勝てない事がとにかく悔しいようだ。
「おれは将来海へ出て世界一強い剣豪になるんだから、今からあんな奴に敗けてるわけにはいかねえんだよ!!!」
それは小さいながらも大きな夢を掲げる少年の、心の底からの叫びだった。


その日の夜。
「や―――っ」
少女の声と竹刀が振るわれる音が道場の外で響き渡る。

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作者名:寝月縁 | 作成日時:2020年7月30日 2時

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