38 ページ40
「じゃあ……気をつけて」
「うん。ラギーくんも戸締りしっかりね」
手を振って別れた後、懐に忍ばせていたスクロールを取り出す。
「……ラギーくん、なんでフウのこと聞いてきたんだろ」
スクロールを破りかけた手を止めて、古ぼけた灯りの付いた家に目をやる。
一切此方に危害を加えないことを前提に彼が一族を去ったのなら分かる。だが、奴は計算高く用意周到な人間だ。
「ラギーくん！！」
「うわっっ……ちょ、A、帰ったんじゃ……て、瞬間移動のスクロール持ってたんスね｣
「ラギーくんさ、フウから何か聞いてたりしない？｣
瞳がほんの一瞬、動揺の色を見せた。
フウと最後の会話をしたのはきっとラギーくんだ、あんな紙切れ1枚だけで終わる男じゃない。
もし万が一、あの男がラギーくんを狙っているのら、きっと最後の会話に答えがあるはず。
「フウの事だからこのまま消える訳ないの！｣
「また、その男っスか……」
「フウと最後に話したのはラギーくんなんだよね？！｣
「そうっスよ……」
答えを催促する彼女の両手をやんわりと自分から引き離す。戻ってきてまでやはりあの男のことが気になるのか。
どうしてそこまで聞きたがる、どうしてそこまで縋る。
「あのね、フウは」
「フウ、フウ、もうウンザりッス」
未だ掴んだままの彼女の手を握る力が強まる
あの男は未練も捨てたと、答えが全てあの一言なのに
吐き捨てるように呟いた俺の言葉に、怯えたように首をすくめて足を引いて振りほどこうと逆に力を込められた。
「ラッ……｣
呼ばれるよりも速く薄桃色の唇に押し付ける。重ねるというよりも傷が付かない程度の力で犬歯を立てれば、身体は抵抗を止めて、二、三繰り返して唇を離すと、ﾋｭｯと息を呑む音。
正しいやり方なんて俺は知らない
だからただ、塞ぐための口実が欲しかっただけ
子供が甘噛みするかのように、己の牙で言葉を呑み込ませて。
「俺、Aが思うほど安全な男じゃないんで｣
「だから俺の前じゃ、少しは警戒して欲しいっス」
彼女の代わりにスクロールを破りきると、光が身体を包み込み転送先へ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 392人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
愛(プロフ) - 遊ちゃん_SKZさん» 最後までお付き合い頂きありがとうございました！ 喪失感…ですか！とても楽しんでいただけて良かったです！ありがとうございました！私も大好きです☺️🙏 (2021年11月28日 20時) (
レス) id: 1c0863e534 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 泡沫さん» 最後でお付き合い頂きありがとうございました🙏 伝えたい事が伝わっていたのならば良かったです☺️楽しんで貰えてなによりです！嬉しいお言葉ありがとうございました☺️🙏 (2021年11月28日 20時) (レス) id: 1c0863e534 (このIDを非表示/違反報告)
遊ちゃん_SKZ(プロフ) - 完結おめでとうございます😭😭アニメが終わった時の喪失感並みに喪失感やばいです、、(大丈夫？)マッッッジで面白かったです！！白虎ちゃんのようにこの作品を追えて幸せでした🥰また面白い作品待ってます！！！！大好きでs(( (2021年11月28日 11時) (レス) @page50 id: fe8355afed (このIDを非表示/違反報告)
泡沫(プロフ) - 完結おめでとうございます!!!もう語彙力の塊で表現の仕方がとっても上手で、すごく面白かったです！ (2021年11月28日 11時) (レス) @page50 id: 7687e77697 (このIDを非表示/違反報告)
愛(プロフ) - 泡沫さん» 甘噛みするラギーくん絶対に可愛い……と思って書いちゃいました☺️ 絶対に可愛いですよね！！ (2021年11月27日 23時) (レス) id: 1c0863e534 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
