灼熱の太陽。 (ページ9)

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朝食の支度をしていると、戸を叩く音がした。
私は手を拭いて、玄関に向かった。

「おはよう、A」
「おはようございます、杏寿郎さん」

戸を開けて、彼を見上げる。

「朝食があと少しでできますよ」
「あぁ、それは楽しみだ」

目を細め、彼は笑った。

「いただきます」
「いただきます」

お互い、手を合わせて、食事をする。
まるで夫婦のようで、少し照れくさい。

彼は私と目が合うと笑う。
幸せで、でもやっぱり恥ずかしくて、私はへにゃりとしたあまり可愛らしくない笑顔をしているのだろう。

「A」
「はい」

杏寿郎さんは私が壁に貼り付けた紙に気づいたようで、箸を止めた。

「これは……」
「今日やることと、最近ここに来る前の自分が思い出せなくて、忘れないように書き出してるんです」
「そうか、それは心配だな。早めに手がかりを見つけなくてはいけないな」

杏寿郎さんはそう言って、また食事を再開した。

＊＊＊

私達は食事を終え、片付けをする。

「杏寿郎さん」
「ん？どうした」

食器を洗いながら、そういえば……と私は続けた。

「毎日杏寿郎さんは食事は私ととられてますが、向こうの……煉獄家の方で食べなくても大丈夫なのですか？」
「あぁ、もちろんあちらでも食べているぞ？」
「え？」

私がぽかんとした様子で杏寿郎さんを見つめると、彼が吹き出した。

「ははは、俺はよく食べるんだ」
「あぁ！そうだったのですね」

全て皿を洗い終えると、杏寿郎さんが私の手をとった。

「A、出かけよう！」

そう言って手を引くので、私はよろける。
それをすぐに腰に手を回して支える杏寿郎さん。

すごく手馴れているようで、誰にでもこうしてるのかななんて考えたりして。

「えっ、私……」
「ここから出ないと、帰る方法も分からないぞ。それに息が詰まるだろう？」

私のやることリストは杏寿郎さんがとって、折りたたみ、胸元に入れてしまう。

「あぁ！杏寿郎さん！！」
「A、帰る方法を見つけると言っても、何を用いて見つけるんだ？」
「っ……、えっと書物とか……？」
「元に戻る方法が載っている書物など、見つからないだろうな」

杏寿郎さんの声が少し低くなった気がした。

「と、トンネル！とか……井戸とか……異世界に繋がってるとか何とか……聞いた事……」
「試すつもりか？」

杏寿郎さんは静かにそう呟いた。