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燃え上がる炎の中に制服を投げ入れた。
「これで最後だな」
未来から来た彼女の持ち物はこれで全て処分し終えた。
「……兄上」
「千寿郎、このことはAには言ってはいけない。千寿郎、お前もAに戻って来て欲しいと思っているだろう?」
千寿郎は俺を見つめ、そして泣きそうな顔をした。
「Aさんは亡くなりました。…兄上、もう僕達は前に進むべきです」
「杏寿郎、彼女にAさんを重ねるなんて無理があるぞ」
千寿郎も父上も味方をなさらない。
なぜ?
Aは、Aだ。
例え未来から来た者だろうが関係ない。
彼女は紛れもなくAの生まれ変わり。
ただ昔の記憶はなかった。
俺と過ごした記憶もない。
────でもそれでも良かった
彼女の奥底に眠るAは確かに存在していたのだ。
毎日、毎日────
彼女に前世を受け入れさせるために、苦しむことになったが、これも全て俺とAの幸せのためだ。
彼女が俺に心を許せば許すほど、彼女は記憶がなくなり、Aが現れた。
幸いAは自分が死んだことを知らない。
「A」
「杏寿郎!」
「体調の方はどうだ?辛いとこはないか?」
「うん!最近とても調子がいいの。体も軽くって。こんなの久しぶり」
Aが喜ぶ姿を見て、頬が緩む。
「おかえり、A」
『奥底に眠る。』【おしまい】
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