疲れたあなたを2434たちが出迎えてくれるそうです3【短編集】

鈴i原るiる 4 ページ42

ごしごしとタオルで手を拭かせてもらい洗面所を後にする



確か鈴原先輩、この部屋で待ってるって言ってたよな
先ほどまでトイレ、洗面台、寝室などを一通り説明してもらっていたのだが、やはりまだ慣れない
開けたらトイレ、なんてことになりませんように、そう意を決してドアノブにかけた手に力をこめる



扉を開くと、ふわりと心地の良い香りがした
あ、鈴原先輩の匂い、なんて気づいてしまう自分がだいぶ気持ち悪い



いや、鈴原先輩の距離が近いのも悪いんだ
話すときだってなぜか触れるほどの距離感だし、会うたびに後ろから抱きしめてくるし、それに、、



一人言い訳大会を始めた私だったが、Aちゃん、と呼びかけられた声ではっと正気に戻った
こっちにおいで、とばかりに隣の椅子をポンポンと叩く先輩が目に入る



ありがとうございます、と言って示された椅子を引くが、なんだか一方的にやましい気持ちを抱いてしまったような気がして気まずい、引くときに少し先輩から距離を離しながら座った



「、、やっぱり、Aちゃんって少し私から距離あるよね」



私が距離をとったことに気づいてしまったのか、少し寂しそうに笑う鈴原先輩
これまでの私の態度も鈴原先輩という呼び方も相まっていたのだろう
違うんです、と言いたいがそういってしまえば理由が必要になる
意識してしまった、なんて死んでも言えるわけない



それもこれもすべて尊敬しているからこそなのだが、うまくそれを伝える手段はないのだろうか
そう考える間にも先輩は、歳も違うし話しづらいよね、無理言ってごめんね、と話を終わらせようとしてしまう



「その、尊敬しているから緊張してしまう面もあって、私も仲良くしたいとは思ってます、、るる、先輩」



恥ずかしくて目をそらしてしまったし、言い方もぎこちない
特に反応がないな、もしかして気づかなかったのか、、？



そうだとしたらただただぎこちない社交辞令のように聞こえてしまっているかもしれない
そんな風に誤解されるのだけは嫌だ
弁明しようと顔を戻すと驚いているのか、目をかっぴらいた先輩とばっちり目が合った



真顔すぎてなんだか怖いな、目をそらせないでいると驚きで見開かれた目が表情とともに徐々に歓喜にほころんでいく



これは、まずい



「Aちゃん！！」



がしっと抱きしめられそうになるのを寸でのところで回避した

鈴i原るiる 5→←鈴i原るiる 3

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す