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大好きだった祖母が残した喫茶店
私は祖母もその店も大好きだった
DIYが得意だった祖父が作ったテーブル
祖母が趣味の陶芸でつくった器たち
小さなタイルのモザイク
ガラスの粒をつなげたランプ
店のあちこちに飾られたアンティーク雑貨
どれも失いたくなかったから、
私が引き継いだ
住宅街の一角の隠れ家のようなこの場所を
大切に思ってくれてる人は沢山いて、
彼もそのうちの1人だった
その日はclose前からノーゲストで
お天気も悪いし、早々に看板を下ろそうか？
と店内から窓の外をみてた
雨足が少し弱くなった頃合いを見計らって
看板を下ろしに出ようとしたその時
一台のタクシーが止まる
キャップを深く被った男の人が1人
店の入り口へと続く細い通路に入っていくのが見えた
『いらっしゃませ』
軽く会釈をしたその人は店内を見渡すと
奥まった2人がけの小さなテーブルに座った
お水を運ぶと
「コーヒー、お願いします」
と掠れた声でポソリとオーダーした
キャップとマスクで顔は殆ど見えない
だけど何がひっかかる
なんとなく見え覚えがあるような･･･
カウンターの奥のキッチンでコーヒー豆をカリカリっと挽きながら、そのお客さんを眺めてた
フィルターにお湯があたらないように、ゆっくりゆっくりお湯を回し入れる
丁寧にゆっくりと、一定の速度で
ふんわりとコーヒーの香り広がりはじめる
その瞬間･･･あと、もう少しでなにか思い出せそうな気がしたけど、結局記憶の尻尾は掴みきれないままでいた
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作者名：Riri | 作成日時：2020年11月7日 18時
