優しくてすこしバカ

＊ ページ3

レモンサワーのグラス水滴を指でなぞりがら
思いだすのはあの日の事

岸くんの長い綺麗な指と
鍛えあげられた逞しい身体

普段みせないオトコの顔

ベッドに残る甘い香水の香りが
蘇ってきた気がして視線を上げると岸くんがいた

『え？』

「お疲れ様です･･･」

隣りの空いた椅子に腰を下ろす

『あ、そこ永瀬が･･･』

「あー廉は、ちょっと、その･･･先に帰っちゃっいました」

へ？･･･

席をたった時に何がか引っかかった
鞄だ･･･鞄ももって出たから何となく違和感を感じたんだ

やられた･････

最初から仕組んでいたのだろうか

「すみません！！会社ではなかなか話せないから、廉に頼みました」

『･･･うん』

「ちゃんと話したくて」

『･･･うん』

さっきから頷く事しかできない自分が嫌になる

「俺･･･はじめてだったんです」

『ええぇ！！？はじめて？｣

「やっ、その、ちゃんとお付き合いしてない人と、、そういう関係にってのがっ･･･てのです」

あぁ、なんだビックリした

そりゃそうだアレで初めてなんだとしたら
こわいわ･･･

「で、色々考えてみたんっす」

「あの日俺が行けなかったら、廉とそうなってたのかな？とか･･･」

うっ･･･それは考えたくもない

「今までもとか、この先誰かとそういうのあるのかな？とか･･･」

いや、ない！今までもなかったし、この先だってない！もう･･･あんな飲み方はしない

心の中で答えは出るも、それは言葉にはならず、岸くんの話しを黙って聞いていた

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