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夕方になっても我が物顔で通りを照らす太陽は、人の時間感覚を狂わせる。
アスファルトから跳ね返る熱気は、じわじわと俺を蒸し焼きにしようとしていた。
脳みそが溶けてしまいそうだ。
たらりと汗が頬を伝うのを感じて、ハンカチを取り出す。
洒落っ気の欠けらも無いTシャツにジーンズ。
そんな冴えない格好をしている俺は、祭りだからと粧し込んでいる人達の中で確実に浮いていた。
「ごめん、遅れた」
人々が俺の前を通り過ぎていく中で、パタリと止まった彼はバツが悪そうに頭をかいた。
長針が12の所からほんの少しだけ動いた時だった。
「いいよ、俺も今来たところだし」
そう？と途端にホッとした顔を見せる彼は学校に居る時より随分とリラックスしているように見えた。
くるくると変わる表情はどれも俺が知らなかったものだ。
「着ていく服、迷っちゃって」
そう言う薮の格好は、俺のよりちょびっとだけお洒落なデザインのTシャツと、同じくらいにくたびれたジーンズだった。
その服を選ぶのに時間なんてかかるわけないでしょ、とは言わなかった。
都会から来た、というもんだからやけに身構えていたけど、本人はあまりそういうことに興味がないらしかった。
「それにしても暑いな」
薮が襟元を掴んで、パタパタと空気を送る。
この暑い中でも毎日第1ボタンまで閉めてカッチリと制服を着こなしていたから、ラフでゆるりとした薮の格好は、"私服の薮も見たい"という俺の不純な動機を十分に満足させた。
「大ちゃん達も来てるんだってさ」
「へえ、祭りとか久しぶりだ」
俺も、と言いかけた口を慌てて閉じる。
そうなんだ、とそれ以上会話の広がらない返事をしてしまってから、俺達の間に沈黙が流れる。
あの教室では当たり前だった静けさも、なぜだか気まずく思えてしまう。
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