君がくれた夏 (yb×in) (ページ4)

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薮は、部活に入っていなかった。

でも、勧誘を受けていたらしいサッカー部の練習を見るたびに目を細めて微笑んでいた。
そうして、必ずその後は何かを堪えるような表情をした。

だから、容易くサッカーについては触れられなかった、のに。

「久しぶりに蹴るか」

薮からの意外な提案に思わず声をあげてしまいそうだった。

「俺、サッカー出来ない…」

「何言ってんだよ、ボールに足当てるだけだから」

だから、思う方向に飛んでいかないんだってば。
そう渋る俺を楽しそうに見つめていた薮は、ぐいと俺の手を引っ張った。

「近くに公園あるでしょ」

「えっ……」

さすがに、学校を抜け出したことはなかった。
確かに道路を跨いで向こう側に小さな公園はあるけれど。

「な、今日だけ」

駄目か？なんて、白々しい。

そうやって頼まれたら俺が断れないこと、知っているくせに。

***

体育をしている生徒たちにバレないように身を屈めて横を通り抜けて校門を出る。
公園には、誰も居なかった。

「ふふ、スリル満点」

「ばーか」

うっすら滲む汗を拭う薮は本当に楽しそうに笑っていた。
笑顔のまま、ぽんぽんとリフティングを始める。

自由自在に薮の近くを行き来するボールは、まるで生き物のようで。
ボールを操る姿の奥に、小さな薮が重なって、きらきらと輝いていた。

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