54話 遠くから。 ページ17
？side
ぼーっとしている
毎日、毎日。
たまに届く雑誌を何回も何回も見直して
毎年届くDVDに胸を踊らせ、見つめて、目で追いかける
毎年DVDについてくる手紙には、挨拶と近況報告と、謝罪。
こちらからは手紙は送らない
まだあの子には、僕という存在が付きまとっているから
それを早く取り払って、忘れて。
いっそのこと、僕のことも、思い出も全部、消えてしまえばどれだけいい事か。
何度それを願ったことか。
「＿＿さん、手紙ですよ。」
淡いピンクのカーテンを開けられ、僕の身の回りを手伝ってくれている人が手紙を渡してきた
差出人は……。
いつもと同じ何も無い封筒に包まれていたものは、いつもの紙ではなかった
「え、それってレアものですよね…？」
無知な人でも絶対に知っている紙。
こんなものを送ってくるなんて……。
どうかしている。
「先生に聞いてみますか？」
遠くから見つめよう
あの子の目に届かないところで。
「えぇ。お願いします。」
これもまた、ただの始まりに過ぎない
「許可おりましたよ。人が多いので気をつけてくださいとのことです。」
「ありがとうございます。」
「それと……。＿＿さんに電話です。」
「分かりました。今行きますね。」
「もしもし？」
『私。来てくれる？』
「もちろん。…ふふっ、懐かしいね。こうやって話をするのは。」
『うん。体調はどう？』
「落ち着いてるよ。……君も面白いものを送ってくるようになったね。」
『多分、今年が1番だから。あの人はそういうものを作ろうとしてる気がする。』
「やっぱり、君でも分からないんだね。」
『そんなのいつものことでしょ。』
「僕が行くこと、あの子には？」
『言ってないよ、言えるわけない。』
「だよね。僕は遠くから観るよ。」
『うん。……気をつけて来てね。』
「うん。君も頑張って……
ありさ。」
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作者名：心亜 | 作成日時：2019年3月9日 18時
