12年前の元彼は私を見てくれない【松野千冬】

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それから1週間後の事だった


「松野千冬が死んだ」


兄からの突然の電話だった

兄とは家を出てからずっと会ってなく
たまにメールでやり取りするくらいだった


兄は東京卍會の幹部だったが今は抜けていて
千冬の事は昔の仲間が知らせてくれたらしい

「A、今日お前んとこ行くわ」

「…分かった」

千冬についてお兄ちゃんが知ってる事は話すと言って今日うちに来てくれることになった



ーーーーー


「久しぶりだなA」


「うん、そうだね。そこ座っていいよ」

「おぅ」

私はお兄ちゃんを家に招き入れ、テーブル付近で座るように促す


「A、お前大丈夫か？」


「…正直言って大丈夫ではないかな」

今にも泣きそうでそれを堪えるため必死に笑顔を作る


「そうだよな、彼氏だもんな」


「…それで千冬の事って？」

「あぁ、そうだな。千冬の事なんだがあいつはまだ東卍にいたらしい。」

「え？そんな事千冬から聞いてない」

そう千冬は私には「東卍は辞めた」と言っていた

どうやら千冬は私に心配かけまいと嘘をついていたらしい


「千冬は東卍の稀咲って奴に銃殺された」


「え…！？嘘、だよね…？」


「…本当だ」


「な、何で千冬は何も悪い事してないんでしょ？仲間なのに何で…？」


「…千冬は警察と動いてたらしい。それがバレて」


「…殺されたって言うの？」


「あぁ、武道もその場に居たらしいんだが…」

「…！ 武道が？」


「あぁ、武道は今逃亡中、行方不明だ」


「…」


私が知らない間にそんな事があったなんて

千冬は追い詰められていた


私はそれを知らずに…



「何で、言ってくれなかったの…千冬」


「…言えねぇだろ、お前まで巻き込まれちまう。今の東卍は女だろうが容赦しねぇ」


「でも…っ こんな事になっていたなら教えて欲しかったよ」

私はギュッと震える拳を握り締める


「とりあえずもう千冬の事は忘れろ。変な詮索はしない方がいい」


「そんな…」


「もう23時か、俺はもう帰る。」

兄は時計を見てそう言って立ち上がる


「もう帰るの？」

「あぁ、もう遅いしな、お前だって明日は仕事だろ？」


「…そうだけど」


「だろ？早く休め。俺は帰るからよ」

色々兄に聞きたい事、言いたい事が込み上げる、でもそれをグッと堪える
私は兄の様子からきっと何を聞いても無駄な事を察してしまったから

「…下まで送るよ」


「そうか？じゃあ頼むわ」


私は帰る兄をマンションの外まで送る為兄と部屋を出た

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