12年前の元彼は私を見てくれない【松野千冬】

episode25 ページ26

後ろからバイクのエンジン音が聞こえる

しかもこっちに近付いてくる


私は泣いていたのを隠すように雨と涙で濡れた袖で顔を拭う

バイクは私のすぐ近くまで来て止まる
私は俯いた顔を上げバイクから降りてくる人物を見る


「あ…」


「…。」


バイクから降りてきたのはマイキー君だった
マイキー君は黙って私の元に近付いてくる

私は咄嗟に逃げようとしたけどそれはマイキー君の腕によって抑えられてしまう


マイキー君は腕を私の背中に回し優しく抱き締めてくれる、私は驚いて思わず肩がビクッと震える


「な、んでマイキー君がこんな所に…？」

涙で掠れた声で私がマイキー君にそう聞くとマイキー君は何も言わず私を抱き締める力が強くする



「何でまた泣いてんの？」


「…っ」


マイキー君は少しだけ私から体を離し真っ直ぐ私の目を見る
その真っ直ぐな目に私は視線を外せなくなる


黙り込んでしまった私にマイキー君はシラを切ったのか口を開く

「俺には言えねぇ事なのか？」


「…ごめんなさい」

私はそれしか言う事しか出来なかった

本当の事を言えたらどんなに楽だろうか

でもここは夢の中

なかなか覚めないただの夢

夢が覚めれば現実に戻る

千冬がいない、あの現実に

でも夢の中くらいは千冬と一緒に居たかったの

また、千冬と笑い合いたかった

でも、それはもう叶わないんだ


だって千冬の隣には美鈴ちゃんが居るから


私よりスタイルも良くて、私よりもずっと綺麗で

素直で…


私なんか敵うわけない


「マイキー君、来てくれてありがとうございました。でも私もう大丈夫ですから」

私はそう言ってへらっと笑う

勿論、作り笑い

でも、そうでもしないと正気を保ってられない


マイキー君には迷惑掛けられない

これは私だけの問題だから

もう私と千冬は終わったんだよ

もういい加減諦めてよ 、私


「無理に笑うな」


「…！」

マイキー君は私の頭の後ろに手を回し私を抱き寄せる


「気が済むまで泣けよ、辛いんだろ」


「ーっ！」


「俺が、全部受け止めるから」



マイキー君のそのひと言で私の中で何かプツンと切れたかのように私はただひたすら泣いた


泣いて、泣いて


もう涙が出なくなるまで、ずっと



マイキー君は私が泣き止むまでずっと傍に居てくれた

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