12年前の元彼は私を見てくれない【松野千冬】

episode24 ページ25

「俺と美鈴付き合うことにしたんだ」


その千冬の言葉に私の頭の中が真っ白になる
それと同時に心臓を鷲掴みされてるかのように苦しくなる


「…っ」


駄目だ、これ以上この場に居られない


これ以上ここに居たら私はおかしくなりそうだ


私は込み上げてくる涙をぐっと堪えジリジリと後退りをする


「わ、私、帰ります…」


震える声でそう言うとマイキー君が真っ先に私に気付く


「A…？ どうした」


「お母さんもう帰ってくるかもしれないので私だけでも先に帰らないと…」

苦し紛れの言い訳


お母さんは朝方にならないと帰ってこないのに


でも今はこんな嘘にも頼らないと本当に耐えられない


「帰んだったら送る」


「だ、大丈夫です。一人で帰れます」


「いや、駄目だ」


「ほっといてください…っお願いします…っ」

涙が零れ落ちそうなのを必死に隠し私は走り出す


「おい！A！！」


マイキー君の制止の言葉なんて無視して私は無我夢中で走った





ーーーーーーー



「はぁ…っ はぁ…っ」


息が苦しい


もう随分走ってきた


流石に全力で走ってきたせいか足がどんどん重くなっていき遂に足が縺れその場に転んでしまう


「…うっ」



転んだ直後、手の平と膝に激痛が走る
見てみると手の平も膝からも血が出ていた


でも今はそんな怪我に気を留める余裕はなく私はふらふらと立ち上がり、再び歩き始める



「…嘘だよ、ね」

そんな時頭にぽつんと水滴が当たる



「…？」


この水滴が雨に変わるのはあっという間だった


でも調度いい、これだったら泣いても雨のせいにできるから



「…っ！」


私は袖に顔を埋めて声を殺しながら泣き始める
抑えていた涙がボロボロと溢れ出る


本当に辛い、


辛すぎる


現実でも私は千冬に別れを告げられ


夢の中でも千冬は私の元を去っていく


もう、本当に諦めるしかないの？


千冬とまた2人で並んで歩いたり

手を繋いだり 2人で笑いあって

一緒に美味しいご飯食べに行ったり


もう叶わない事なのかな


そんなのやだ


また私の名前を呼んで


Aって、あの時の笑顔で呼んでよ



「うっ…！ひっく…千冬ぅ…」



私を、見てよ


お願いだから…



土砂降りの雨の中私は只呆然と立ち尽くしていた


そんな時だった

背後からバイクのエンジン音が聞こえたのは

episode25→←episode23

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す