この恋、出会いは覚えておりません (ページ13)

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「美味かった、ご馳走様」

「お口に合ってよかったです」

綺麗に完食してくれた彼は、片付けくらいすると言ってくれたのだけど。

「大丈夫ですから、映画見ててください」

そう言ってリビングへ促した。
最初は申し訳なさそうにしていたけど、私が片付けを終える頃にはTV画面を食い入るように見ていた。
真剣な横顔と瞳に、邪魔しない方がいいかなって。
リビングには入らなかった。

「A？」

ダイニングで文庫本を読んでいると、私の名前を呼ぶ声がした。
読んでいるページから目線を上げると、そこには不思議そうな顔をした彼。

「なんでこっち来ないの？」

「邪魔しない方がいいかなって」

「なんで？一緒に見ようよ」

彼は私の手を引いてリビングへ移動する。
さりげない仕草と、触れた手にドキッとして。
もう、今日だけでどれだけドキドキしてるんだろう。

「遅いなと思ったら、本読んでんだもん。びっくりした」

「あー、ごめんなさい？」

「ん、いいよ。再生するね？」

つい謝っちゃったけど、ここ謝るところかな？とふと思った。
でもわざわざ一時停止までして呼びに来てくれたんだし、まぁいいかなって。
ソファーに並んで、大人しく映画の続きを見ることにした。