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朝からそわそわしながら仕事して、17時になった瞬間大急ぎで荷物をまとめる。
「珍しいね、そんなに急いでるの」
「え、そうかな?」
「彼氏とデート?」
隣の席の同期が、ニヤニヤしながら尋ねてくる。
彼氏?デート??
彼は……彼氏じゃない。
デートでもない。
ただ、彼がうちに来てご飯を食べて、DVDとか観て。
ただそれだけ。
……そう、それだけ。
「友達と会うだけ、だよ」
「ふーん?」
「な、なに?」
「そんなに大事なオトモダチなのねー?」
「どういう意味?」
「Aがそんなに浮かれてるの初めて見たもん。特別な人なんでしょー?」
さっきよりもさらにニヤニヤした表情で、私の顔を覗き込む。
恋愛経験豊富で人間観察が趣味の彼女は、この手のことに関して異常な程鋭い。
誰と誰が付き合ってるとか、あの人は片思い中とか、あの2人は不倫してるとか……。
内緒にしているはずの社内恋愛だって、何故か彼女は全部お見通し。
「本当に友達?」
「……友達」
「じゃあ片思い的な感じ?」
「ち、違うって! とりあえずお疲れ様、お先に!」
「お疲れー。”オトモダチ”によろしく(笑)」
ひらひらと手を振る彼女。
明日、またいろいろ聞かれるんだろうなぁ。
少しだけ憂鬱になりながら、私は足早に会社を出た。
スーパーで買い物をしながら、考えるのはさっきの彼女の言葉。
浮かれてた?なんで?
……彼と会えるから?
考えた事なかったけど、私と彼の関係って?
そもそも、彼はどうしてこんなに私に関わってくるの?
彼は私をどう思ってるの?
私は彼のこと、どう思ってる?
わかってるくせに、って言うもう一人の自分に気付かないふりをして。
私は買い物を続けた。
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作者名:リオ | 作成日時:2018年9月5日 19時