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｢この子は正体不明の孤塔、ウイング・ビルズからやって来ている。魔妖界にも科学者的な人は存在してね、謎を解明するためなら何だってする。そして、最大の謎の組織にして、最凶と言われるカワメニコも動くかもしれない。それほどの大問題だ。見つかれば最後、こちらを殺してでもこの子を手に入れて解剖よりもひどいことをするだろうね。だから、なんとしてでも守らなくちゃいけないんだよ｣
言葉も出なかった。このハトはその背中には重たすぎるものを乗せてきた。どうすればいいのかなんてわかるはずもなく、ただただ黙りこんだ。時間だけが冷酷に進んでいた。
｢さて、行かなくちゃ。もうここを出ないと汽車に遅れちゃうよ｣
｢そうですね｣
トランクを持って家を出て、途中で鳥かごを買った。ハトを中に入れて再び歩きだした。どうやら白天の肩に止まっていたらしい。駅のホームは混雑しているわけでもなく、いつもどうりの空き具合だった。
｢156番ホームってどこにあるんですか｣
｢うん、そこの古びた本棚をすり抜けた先だよ｣
｢は？すり抜ける？｣
｢うん、そうだよ。その先に156番ホームが存在する。だからその本棚は撤去しようとしてもどうしてもできないんだよね｣
つい、溜め息をついてしまった。普通にそのホームに向かえるとは思っていなかったが、あの本棚をすり抜けた先だったとは。あの本棚がずっとそこに存在することには違和感を感じていたが、そのためだったのか。いやいや、それ以前にどうやってすり抜けるのだろうか。幼い頃にあの本棚にぶつかって頭にたんこぶを作った記憶がある。確か、ちょうど同じ時期だった。
｢いや、そこをすり抜けられるはずないと思うんだけど。幼い頃にこの時期にこの本棚にぶつかってたんこぶ出来たし――｣
｢まぁ、それができるんだよ。ぶつかったのは五月雨学園の入学がまだ決まってなかったからだね。さ、行くよ｣
そんな理由ですり抜けられるかぶつかるかが決まるらしい。さ、行くよ、なんて言いつつすでに白天は私を引っ張って走り出していた。本棚まであと3、2、1――閉じていた目を開けた瞬間に人混みと見覚えのない群青の汽車が映った。どうやらすり抜けられたらしい。
｢急いで。あと3分で発車しちゃうよ｣
｢ちょ、待ってよ。荷物が多いんだから｣
体の小さい白天は人混みのなかをひょいひょいと縫っていってしまう。見失わないように追いかけて群青の汽車に辿り着いた。
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作者名：天川凛廻 | 作成日時：2017年12月24日 20時
