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「いや、俺、攻撃しに来た訳じゃないって」
「それでも、杖を片手にノックもしないで不法侵入してきたら、隠れるしかないよね」
「まぁ、それもそうか。別に、昨日の仕返しも兼ねて悪戯してあげても良いんだよ?」
「却下」
言い終えたか否かもわからないくらいの即答で暁の言葉を打ち消した。何だ、魔法なんて何一つとして知らない、か弱い一年生をいじめようと言うのか、こいつは。とんでもない奴だな、けしからん。
隠れられる布団を失った――正確に言うと奪われたのだが――今、できることと言えば、思い付く限りでは拗ねたようなふりをすることくらいだった。
「というか昨日、神無月にちょっと暁殴っといて、とは言ったけど、それ以上は何も言ってないし」
「いや、うん、あれはビビった、ビビったけど――。っていや、殴っといてって言ってんじゃんかよ。かんちゃん、あんなに大人しいのに殴りは強かったからな」
「え、昨日の事って、殴った後――だから神無月が抱きついた方の事じゃないの?」
「ばっ、わざわざ言い直さなくていいよ。両方だよ」
いちいち慌てる暁が面白くて、ついつい口の端から笑い声が漏れた。うっすらと赤く色づいた頬を隠すように片手を顔にあてる、その仕草は新鮮で。学園一の問題児は案外、純粋な奴かもしれなかった。
確かに昨日、神無月が暁に抱きついたあの時も、水に赤い絵の具がついた筆をつけたみたいに染まっていた。あの時、暁はまだ神無月のいたずらだと知らなかった。
「あの時の暁の顔、真っ赤だった」
「かんちゃん、中性的な顔立ちしてるし、笑った顔が何ていうか、神秘的?みたいな感じだったし。いたずらってわからんかったし。絶対、俺じゃなくてもちょっとくらい顔赤くなる」
「あー、そ。で、何しに来たの?杖構えて突撃してきたんだから、何か用事あるんでしょ?」
「えっ?ああ、うん、そうだった。確か2時から総合オリエンテーションあるじゃん。あれ、一緒に行こうかと思って」
「あー、そうだね。じゃ、神無月探さないとな……というか、わざわざそれ言いに来たの?」
「うん、そうだけど」
はぁ、と留める間もなく盛大な溜め息が転がり出た。わざわざ杖を構えて押し入ってくるなどという奇襲もどきをしておきながら、用件がオリエンテーションの誘いなのだから仕方がない。
ステンドグラスに囲まれた窓の外に目を向けて、神無月の居場所に思考を巡らせる。やはり、検討もつかない。
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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時