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特に意味もなく、皿の鶏肉を引きちぎった。
別段、食べにくい訳でもない。
引きちぎるだけ。食べるわけでもない。縦に裂けていく鶏肉を、横にちぎる。片付けるのは多少、面倒になるだろう。それでも、ちぎって、時折潰して、皿に散らかしていく。
横の横から覗き込む暁から、何してるの、と笑う声が飛ぶ。見ての通りでしょ、と適当に返しながら、淡々と手を動かし続ける。
ふーん、と言いながら、残骸をつまんでいった。聞こえていたのか。
そのまま作業を続けていると暁から更なる言葉が飛んでくる

「みっちゃん、なんかあったの?ちょっとした殺気すら感じるんだけど」

殺気を出しているつもりはないのだが、どうしたものだろうか。それに何があったかなんて、そう言えたものじゃない。暁なら絶対に笑うだろう。返答を考えてはみるも、やはり途中で面倒になって思考をやめる。その代わり、神無月にちょっと暁殴っといて、と耳打ちして散らかした鶏肉たちをまとめて口に運ぶ。
近くから、ぐえっ、という変な声がした。その方向を見て、自分が仕掛けておきながらも、上出来だと思う。

「何?かんちゃん、いきなり殴らないでよ、怖いわ。いや、真顔でもう一回拳構えるのやめて?マジで怖いから」

「何も、無い、よ。強いて言うなら、さっきの、仕返し?」

「さっき?俺なんかしたっけ?あー、待って、ごめんって」

先ほど、結構痛かったのだろう。拳を軽く構える神無月に、暁は防御体制をとっている。本当にもう一度殴るつもりだったのだろうが、気が変わったのか、神無月の口元に穏やかな笑みが浮かんだ。握りこぶしはそのままで。ただ、力は入っていなかった。
神無月の腕がまっすぐに伸びて、暁の頭の真横を通過する。それによって起きた風に体を縮み込ませる暁とは裏腹に、何を思ったのだろうか、神無月は暁の首に抱きつくようにした。その顔には落ち着き払った、あのどこか神秘的な微笑を浮かべて。

「……え?かんちゃん?」

「殴ら、ないよ。でも、なんか、してやろうと、思って、なんとなく、これにした」

「俺はどう反応すれば?」

その問いに対して神無月は、ふふ、と考えの読みようのない笑い方をして、面白がるように頭を暁の首もとにうずめた。完全に遊んでいる。
助けを求めるようにこちらに視線を送る暁に笑みを返すと、お前かみっちゃん、と叫ぶ声が飛んでくる。うるさいな、と思いながら神無月にもういいよ、と告げるも、本人はまだ遊んでおくことにしたらしかった。

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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時

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