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寮は
どちらから告げられるのかも知らないまま、校長が口を開いた。最初に飛び出した自分の名に、何を思ったのだろうかと首をかしげる。レディーファーストの精神でも発揮しているのだろうか。
「水月A……水の寮とする」
名字に水が入っているからだろうか、いろいろとまわってくる順番が遅いだろうな、と思いながら、神無月の寮の発表を待つ。彼の寮の方が気になるのは何故だろうか。3秒後に、唯一まともに話せるやつだからかと思い当たる。横では本人が心底どうでも良さそうに欠伸をした。
「神無月×××……水の寮とする」
息をつくと、ちょうど神無月がそれをするのと同じタイミングだった。顔を見合わせて笑いあう。外を飛ぶ鳥の群れの羽音と鳴き声で、神無月の名前は聞こえなかった。鳥の群れを少し恨みながら、後で訊けば良いかと諦める。
寮と学年のバッジを受け取り、早々に席に戻る。今日これからの予定を手短に説明され、寮の責任者に着いていく。絶対に迷子になるだろうな、とひとり心のなかで頭を抱えた。これまでも方向音痴によって幾度となく困ってきたが、それらとは比べ物にならないくらい困るだろう。創立者を恨む他ない。
「ここが水の寮。この前に立てば、寮のバッジを判別して、こいつが開けてくれるから」
寮長を見て、首をかしげる。なんて名前だっただろうか。考えることもせず、神無月に頼る事にした。唸る彼の目をじっと見て待つ。覚えているだろうか。やがて、顔を上げてその名を口にした。
「
確かに女性のような名前だ。水のようでもあるだろうか。もう顔も忘れてしまったが、凛々しい声だけは感覚的に記憶している。声で覚えるかな、と息をつく。
中に入っていく人混みを無言で見送ってから水のアーチをくぐった。正確に言えば、道を思い出そうと目を閉じていた。最後に私と共に入ろうとして私に気が付いた神無月に袖を引かれて双子の細い滝の先へ。
各自部屋に案内されて、思い思いに過ごす。相部屋だと思っていたが、創立者は何を思ったのか個室である。
少しくらい片付けていなければ白天に叱咤されるだろうとは思いつつも、床に寝転がった。
視界に映る大小、濃淡様々な蒼に、幻想少年を思い出す。あれから何処へ飛んだのだろうか。
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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時