検索窓
今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:892 hit

-7 ページ17

五月雨学園における戦争。それは生徒と教師によるものだという。
日々繰り返されるその熾烈な戦いは絶え間なく、1日に複数勃発することもあり、怪我人はもちろん、死者が出ることも稀にあると。それ故、この学校にはいくつもの隠し空間、通称シャドウ・スペースや戦闘時のみ作動する罠、小型支援ロボットが存在するらしい。
火葬場や墓を見たのはそのためかと納得する。
歴史やらそれにまつわる行事やらを説明されて、ようやく部隊の説明へ。
部隊は人数の多い順に戦闘部隊、医療部隊、援護部隊、監視部隊の4つ。1年の前期は研修期間、全てを経験させられ、1年後期より、部隊に正確に振り分けられる。

戦争の話を一通り聞き終えて、全体の8分の1がざわめいた。1年生だ。そのざわめきの中に入ることはなく、ある映像を思い出していた。
あの声――聞き覚えがあると思っていたら、つい最近、昨日の夢の中で聞いていた。
――了解!攻撃開始、健闘を祈る――これは染川葵、現蒼寮長の声だった。いつの映像かは分からないが、彼が指示しているあたり、最近のものだろう。
あの後、彼らはどうなったのだろうか。白天を呼び寄せて声を落とす。

「ねぇ、この前、土の寮の2年、暁って人がギリシャ語教師を怒らせたと思うんだけど――あの後ってどうなったの?」

「あぁ、彼なら3年になってるよ。その教師っていうのはナカーヒラ・ナッサリーのことだね。彼女は3か月間、部隊の監視下に置かれることになって、あと2か月かな。死者、怪我人共に出なかった。というか、ソアが監視部隊長になってからは死者は出てないし、怪我人も少ないよ。……なんで入学1か月前の戦乱のことを知ってるのだね?」

答え終えてから、私がそれを知っているという異常に気づき、尋ね返した。なんと答えるべきなのだろう。考えているうちに白天がまさか、と口を開いた。

「彼に夢の中で会ったのかい?」

彼とは、幻想少年のことだろう。首肯を返し、何故それを、と問い返す。あの夢の中で白天には会っていないはずだ。

「時折、彼は新入生の誰かの夢に入り込んで話すんだよ」それはため息をつくようで。

見えない晴天に思いを馳せて、
絶え間なく流れる双子の滝に耳を傾けて、
なびく蒼に目を眩ませて、

はたと横を振り返る。神無月が眠っていた。

何故、届かないそれに触れたのかは、
何故、轟音のなかに囁きを聞いたのかは、
何故、蒼のなかに紅を見たのかは、

わからない

暗闇の中に光を見つけることはないまま彷徨った

-8→←-6



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 6.0/10 (1 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。