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五月雨学園における戦争。それは生徒と教師によるものだという。
日々繰り返されるその熾烈な戦いは絶え間なく、1日に複数勃発することもあり、怪我人はもちろん、死者が出ることも稀にあると。それ故、この学校にはいくつもの隠し空間、通称シャドウ・スペースや戦闘時のみ作動する罠、小型支援ロボットが存在するらしい。
火葬場や墓を見たのはそのためかと納得する。
歴史やらそれにまつわる行事やらを説明されて、ようやく部隊の説明へ。
部隊は人数の多い順に戦闘部隊、医療部隊、援護部隊、監視部隊の4つ。1年の前期は研修期間、全てを経験させられ、1年後期より、部隊に正確に振り分けられる。
戦争の話を一通り聞き終えて、全体の8分の1がざわめいた。1年生だ。そのざわめきの中に入ることはなく、ある映像を思い出していた。
あの声――聞き覚えがあると思っていたら、つい最近、昨日の夢の中で聞いていた。
――了解!攻撃開始、健闘を祈る――これは染川葵、現蒼寮長の声だった。いつの映像かは分からないが、彼が指示しているあたり、最近のものだろう。
あの後、彼らはどうなったのだろうか。白天を呼び寄せて声を落とす。
「ねぇ、この前、土の寮の2年、暁って人がギリシャ語教師を怒らせたと思うんだけど――あの後ってどうなったの?」
「あぁ、彼なら3年になってるよ。その教師っていうのはナカーヒラ・ナッサリーのことだね。彼女は3か月間、部隊の監視下に置かれることになって、あと2か月かな。死者、怪我人共に出なかった。というか、ソアが監視部隊長になってからは死者は出てないし、怪我人も少ないよ。……なんで入学1か月前の戦乱のことを知ってるのだね?」
答え終えてから、私がそれを知っているという異常に気づき、尋ね返した。なんと答えるべきなのだろう。考えているうちに白天がまさか、と口を開いた。
「彼に夢の中で会ったのかい?」
彼とは、幻想少年のことだろう。首肯を返し、何故それを、と問い返す。あの夢の中で白天には会っていないはずだ。
「時折、彼は新入生の誰かの夢に入り込んで話すんだよ」それはため息をつくようで。
見えない晴天に思いを馳せて、
絶え間なく流れる双子の滝に耳を傾けて、
なびく蒼に目を眩ませて、
はたと横を振り返る。神無月が眠っていた。
何故、届かないそれに触れたのかは、
何故、轟音のなかに囁きを聞いたのかは、
何故、蒼のなかに紅を見たのかは、
わからない
暗闇の中に光を見つけることはないまま彷徨った
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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時