検索窓
今日:8 hit、昨日:7 hit、合計:96,244 hit

第三十八話 ページ40

「あなたが死んでしまったと思ってーー他の男の方と出会って、惹かれてしまってーー
今お付き合いしています・・・」
口が重い。言いたくない。
けれど、ここで嘘をつけば、後々もっと苦しくなる。
「でも、秀一さんのことを忘れた日なんてない、一日も。
ずっとあなたのことだけを思っていたかったーーそう思っていたことは、信じて」
言い訳になってしまうかもしれないけれど。
本当に、どちらも同じくらいに愛してしまったの・・・。

私が言うと、秀一さんは目を閉じた。
「悪く思うことはない。俺は組織に潜入した時点でお前と別れたつもりだった。
それに・・・」
秀一さんは、わずかに眉を歪めた。
「俺だって組織で、ある女と関わりを持った。50:50だ」
「女・・・?」

組織の人と関わりを持てたって言っていたのは覚えている。
もしかして、ハニートラップという事・・・?

「その人のこと、好きになっちゃったの?」
秀一さんは、腕を組んだまま、しばらく考え込んでいた。
そして、静かに言った。
「あの女が俺の中を通り過ぎて行ったことは確かだ。
お前を裏切ったことに変わりはない」
彼は、恋愛感情をそこまで抱くタイプじゃない。
だからこそ、はっきりとその人を愛してしまったかはわからないんだ。
けれど、その人は秀一さんにとって大事な存在になったのは確かーー。


なんだか。
自分の気持ちがわからなくて。
涙は溢れてくるけれど。
裏切りを犯していたのは自分だけではないという安心感と。
秀一さんが他の誰かを少なからず想ったことへの嫉妬と。
この先どうしたらいいかわからないという不安感とーー。


「お前が他の誰かを愛することを止めたくはない。
今の俺では、お前のことを幸せにしてやれそうにない。
だがーー」
秀一さんは、私の涙を人差し指ですっと拭う。
「それは相手にもよる」

相手ーー?
秀一さんは、私の頬を撫でた。
「お前が愛している男が誰かはわかっているよ。
彼は組織の者であり、警察のトップシークレットであり、探偵である・・・。
今の俺より危険な立場にあると言える」
私の知らないことまで、彼のことを知っているなんて。
驚いている中、秀一さんは、私の頬を愛おしむようにつねった。

「そんな危ない男に、お前をやるわけにはいかない」

断固とした態度で、秀一さんは言った。
「後々彼はもっと危険な仕事に身を投じるはずだ。
お前が巻き込まれない保証なんてない。
俺は愛する女をむざむざ危険にさらそうとは思わないんでね」
だから、と付け加える。
「降谷零くん・・・彼にお前を渡す気はない」

第三十九話→←第三十七話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (110 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
277人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - iwaさん» コメントありがとうございます!いえ、私自身どちらか一人を選ぶとすると話の収集がつけられなくなってしまうため、もう一人はもう一つのストーリーで幸せになってもらうことにしました笑 今テスト期間のため、再来週くらいになったら更新再開します! (2019年7月10日 20時) (レス) id: 016d1e72e6 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - どちらもありのエンディング贅沢すぎて嬉しいです。お手を煩わせてしまって読み手として申し訳ないですが、たのしみにしています。 (2019年7月10日 20時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 亞里亞さん» ありがとうございます!それぞれのエンディングは今悩み中です! ただ幸せになって終わるだけじゃないかもしれないですが、楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2019年7月7日 19時) (レス) id: 8f4e5bf045 (このIDを非表示/違反報告)
亞里亞 - お疲れ様です!!赤井さんも降谷さんも大人なので最終的には幸せを願って身を引けるんだろうななんて今から泣ける準備してますね!! (2019年7月7日 15時) (レス) id: 6308b08dc9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 優愛さん» ありがとうございます!! 最近更新遅くて申し訳ないですが、ゆっくり頑張ります! (2019年6月13日 21時) (レス) id: 8f4e5bf045 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2019年5月24日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。