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第三十話 ページ32

沖矢さんは、秀一さんじゃないのか。
そんな疑惑を抱えたまま、私は帰宅した。
いつもは私を迎えにきた後、安室さんはもう一度仕事に行くのだけれど、今日はそのままお家に。

「今日は口数が少ないな。どうしたんだ」
安室さんーーいや降谷さんは、すぐに察したようで、炊飯器のセットをしながら聞いてきた。
私はなるべく平静を装おうとする。
「なんでもないよ。私にも静かな日はあるもの」
「そう。てっきり他の男に何か言われたんじゃないかと思ったが」
ぎくり。まるで見てたみたい。
ーーいや、ほんとに見てたんじゃない・・・?

私がソファに座っていると、一仕事終えた降谷さんは私の隣に座って、肩をぎゅうっと抱いてきた。
「僕に嘘をついてないか?」
「ついてない。なんにも無いもの」
「ふーんーー」
拗ねたような顔をして、降谷さんは私の髪をいじる。
「それより、降谷さんは休んでいていいんだよ。私が料理作るから」
「いや、たまには僕にも仕事させてくれ」
「十分働いてもらってます」
降谷さんは、にっこりと笑い、私の頬に口付けをした。
ほんと、この人スキンシップが激しい。ほんとに付き合ってる感がすごいもの。
嬉しくはあるんだけどねーー。

「そうそう、朝にここにつけるのやめてよ! 今日結構目立ったんだから」
「そうか? みんなそんなとこ気にして見るのか?」
「赤くなってるんだから目立つに決まってるでしょ! もう、恥ずかしくって」
「でもどこかにはつけておきたい。そうじゃ無いと不安になるでしょう?」
君が誰かに取られるんじゃ無いかって、とつぶやく降谷さん。
そんなこと・・・無いのに・・・。

一瞬、あの人の顔が浮かんでしまう。
あの人は、本当はどうなったのーー?


「やっぱり今日はおかしいな。上の空じゃ無いか」
「そんなことないよ」
降谷さんは、私から離れて、目を細くする。
やばい、やっぱバレバレだ。

私は彼に腕を絡ませて、寄り添ってみる。
「やめろよ、白々しい」
「降谷さんのこと、好きですよ」
「君の僕に対する思いより、僕の君に対する思いの方が、ずっと強いと思うけれど」
不満げながらも、降谷さんは私のことをひょいと持ち上げて、膝の上に乗せた。
いつもより強く抱きしめられて、深くキスをされる。
「他の男のこと考えてるんじゃないだろうな」
「考えてません」
「本当に?」
「今はあなたのことしか考えてないよ」
やっと、彼の顔に笑みが浮かんだ。


・・・そう、今はあなたしか見えていないよ。
今、は・・・。

愛することは、傷つくことだ。
もしかしたら、心を引き裂くことが、起こるかもしれないーー。

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(プロフ) - iwaさん» コメントありがとうございます!いえ、私自身どちらか一人を選ぶとすると話の収集がつけられなくなってしまうため、もう一人はもう一つのストーリーで幸せになってもらうことにしました笑 今テスト期間のため、再来週くらいになったら更新再開します! (2019年7月10日 20時) (レス) id: 016d1e72e6 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - どちらもありのエンディング贅沢すぎて嬉しいです。お手を煩わせてしまって読み手として申し訳ないですが、たのしみにしています。 (2019年7月10日 20時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 亞里亞さん» ありがとうございます!それぞれのエンディングは今悩み中です! ただ幸せになって終わるだけじゃないかもしれないですが、楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2019年7月7日 19時) (レス) id: 8f4e5bf045 (このIDを非表示/違反報告)
亞里亞 - お疲れ様です!!赤井さんも降谷さんも大人なので最終的には幸せを願って身を引けるんだろうななんて今から泣ける準備してますね!! (2019年7月7日 15時) (レス) id: 6308b08dc9 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 優愛さん» ありがとうございます!! 最近更新遅くて申し訳ないですが、ゆっくり頑張ります! (2019年6月13日 21時) (レス) id: 8f4e5bf045 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2019年5月24日 0時

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