第十六話 ページ18
あの夜のことーー。
赤井が死んでるとは思えない。そう安室さんは言っていた。
そして彼は、女性からバーボンと呼ばれていた。
あの人に聞いたことがある。
あの組織では、実力者にはコードネームが与えられる。
そしてそれは、酒の名前にちなんだものであると。
だから安室さんも、相当なポジションに立っているらしい。
彼ほどの人が、あの人の死を疑うということは、本当にあの人は生きているのかもしれない。
私は大きく息をついた。心のつかえが取れたみたい。
会いたい。生きているのなら。どこにいるの?なぜ私に会いにきてくれないのーー?
カーテンで締め切られた部屋。生活に必要なものは揃ってるけど、物は少ない。
安室さんが、お家であんまり過ごさないことが良くわかる。
あの人の目的はなんだろう。あの人とどんな関わりが?
・・・今は絶対教えてくれないだろうなあ。
私はぼんやりとテレビを見ていたけど、もう6時過ぎだしそろそろ夜ご飯の支度しようかな。
安室さん、いつ帰ってくるのだろう。
なんか、男の人と形だけとは言え同居してることになってるから、あの人に対してちょっと申し訳ないけど・・・。
安室さんの分も、作っておこう。
私はとりあえずシチューを作ってみた。シチューとかカレーは失敗しにくいからね。
だけどなかなか安室さんは帰ってこない。
もう12時近いけど。仕事ってそんなに遅くなるもの?
なんとなく暇で、私は彼の洗濯物を洗ったり、浴槽を磨いてみたり、玄関の掃除をしてみたりした。
だいたい綺麗だけど、やっぱ男の一人暮らしだから、至らないとこもある。
ちょっと可愛いな、なんて思ったり。
あの人は家事とか全くしなかったから、結構苦労したのを思い出した。
と、私が掃除を割と楽しんでやっていると、鍵が回る音がした。
ちょうど玄関あたりを掃除していた私が見上げると、安室さんが立っていた。
「何をしてるんです?」
「お掃除。ちょっとだけ綺麗になりました」
「それはどうも」
安室さんは、手に大きな紙袋を持っていた。
「これ、あなたの服にどうぞ。お好みではないかもしれないですけど」
「ありがとうーーあの、夕食作っておいたから」
私がいうと、安室さんは目を丸くした。
「お気遣いなく。僕は別に家事をさせるためにあなたをここに置いているわけではありませんよ」
「暇だったから。余計なお世話?」
「いえ・・・ありがとうございます」
素直にお礼を言ってくれる安室さん。
ここで気づいた。
誰かとお話しするのって、とっても楽しいんだ。
一日中一人って、結構辛いんだ。
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凜(プロフ) - iwaさん» コメントありがとうございます!いえ、私自身どちらか一人を選ぶとすると話の収集がつけられなくなってしまうため、もう一人はもう一つのストーリーで幸せになってもらうことにしました笑 今テスト期間のため、再来週くらいになったら更新再開します! (2019年7月10日 20時) (レス) id: 016d1e72e6 (このIDを非表示/違反報告)
iwa(プロフ) - どちらもありのエンディング贅沢すぎて嬉しいです。お手を煩わせてしまって読み手として申し訳ないですが、たのしみにしています。 (2019年7月10日 20時) (レス) id: d46b647962 (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - 亞里亞さん» ありがとうございます!それぞれのエンディングは今悩み中です! ただ幸せになって終わるだけじゃないかもしれないですが、楽しみにしていてくださると嬉しいです! (2019年7月7日 19時) (レス) id: 8f4e5bf045 (このIDを非表示/違反報告)
亞里亞 - お疲れ様です!!赤井さんも降谷さんも大人なので最終的には幸せを願って身を引けるんだろうななんて今から泣ける準備してますね!! (2019年7月7日 15時) (レス) id: 6308b08dc9 (このIDを非表示/違反報告)
凜(プロフ) - 優愛さん» ありがとうございます!! 最近更新遅くて申し訳ないですが、ゆっくり頑張ります! (2019年6月13日 21時) (レス) id: 8f4e5bf045 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:凜 | 作成日時:2019年5月24日 0時