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まずい。気づいてないとたかをくくっていた。
過去の自分に問う。どうして大丈夫だと思ったんだろうと。
「ねぇ〜。聞いてる？」
どうしよう。どう言うのが正解か。噂で聞いた、なんて私はずっと保健室に居たはずだ。聞ける機会なんてない。
「ねぇねぇ」
「…ねえ、聞いてんの？」
「っ！」
考えるのに時間がかかりすぎてフロイド先輩の言葉を無視しすぎた。
大分頭にきているのか首を軽く絞められる。
「聞かれたことに答えればいいんだよ。そんな簡単なこともできねぇの？」
首を絞める力が強くなる。やばい。倒れる。
「何をお前はやっているんだ！」
息が止まる前にアズール先輩が大きな声でフロイド先輩を叱る。それに少し動揺したのか、私の首から手を離す。音をたて、崩れ落ちるように下を向く。
酸素を取り入れようと咳き込む私にアズール先輩は近寄り、背中をさすってくれる。
「偶然僕が通りかかったからいいものを…。自分が何をしたか分かっているのか！」
「はぁ〜？俺はただ質問してただけ。答えなかったのはそいつじゃん。ね、稚魚ちゃん？」
下から覗きこむように目を合わされる。
否定すればきっと…
頭の中に肯定以外のものは見つからない。
「は、はい…。私が…悪い…です…。」
なるべく目を合わせないように、機嫌をそこねないように答える。
「ね？言ったじゃん。俺悪くねーもん。」
呆れてアズール先輩は言葉が見つからないようだった。だが、これ以上騒ぐ必要がないと思ったのか、
「そうですか。ですが、次からは考え無しに行動しないように。いつも言っているでしょう。」
「は〜い。」
聞いているのか聞いていないのかよく分からない返事をする。一旦その場は収まり彼を叱ったアズール先輩は寮から出ていき、私と彼だけが残される。
もうちょうどいい時間なのか、各部屋の扉が開く音がして生徒の声も聞こえ騒がしくなる。
そんなうるさい中、はっきり聞こえた。
「命拾いしたねぇ、稚魚ちゃん。」
ニタニタと笑いながら横を通りすぎていく。
フロイド先輩の後ろ姿を見る勇気は私には無かった。
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作者名：りん | 作成日時：2021年7月25日 16時
