目が覚めたら棺の中でした (ページ30)

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「…ごめんなさい…。」

先輩の顔に決意が揺らいだ。だが、付き合う訳にはいかない。私は元々この世界の人間ではない。
いつか消えるかもしれない。忘れられるかもしれない。そんな未知の恐怖からフロイド先輩とは一緒に居られない。

「そっか…。だよね。俺、あんなことしちゃったんだもん。当然だよね。」

分かっていた、という風に先輩は自虐的に笑う。
こんな彼を見ると悲しくなる。だが、中途半端が一番良くないと知っている。だからこそ、ここで頷くのは迷惑である。

「でも、俺諦めないよ。ずっと一緒に居たいもん。」

空気が変わり、体を強ばらせる。先輩は本気だ。見ずとも分かる。

「絶対俺のこと好きにさせて見せる。だから覚悟してて？稚魚ちゃん。」

さ、遅いしもう帰ろう、と先輩が促す。先ほどとは一転、表情はいつもの先輩で、優しく微笑んでいる。

先輩は部屋に着くまで繋いだ手を離さなかった。
私の部屋まで送ってくれた彼にブランケットを返し、お礼を言う。扉を閉める前に先輩が耳元で囁く。

「俺が言ったこと忘れないでね？好きにさせてみせるから…。大好きだよ。」

そう言って先輩は自分の部屋に帰っていく。その時の顔の顔は見えなかった。

扉を閉めた瞬間、膝から崩れ落ちる。
あんなのを毎日されたら好きになってしまう。
真っ赤になった顔を両手で隠し、悶える。

ベッドに入るとなぜか快眠で、目覚めも良かった。これが先輩のおかげだとは信じたくなかった。