27 ページ27
いいよね、なんて先輩が聞く。答えなんてひとつしかないのを分かっているくせに。否定すれば性別を言う、と脅しているのだ。
「は…はい…。」
それを聞くやいなや、先輩の顔はとても嬉しそうに口を三日月にする。抵抗すんなよ、と警告され先輩の顔が近づいてくる。
「…ん。やっぱ稚魚ちゃんってかわいーね。」
まず唇に口づけをする。その後、顔全体にキスが降り注ぐ。嫌だった筈が、どこか嬉しく感じる。それに嫌気が差し泣いてしまう。
「え…？なんで泣いてんの？どっか痛かった？」
先輩も泣かれるのは予想外だったらしく、おろおろとしていて、困っている。
さっきまで強引だったのが嘘のように優しく声をかけてくれる。
「は…初めて…なの…にっ…。」
「…うん。ごめんねぇ…。怖かったねぇ…。」
先輩もさすがにやりすぎたと思ったのか私から離れ、距離を置く。そこに大きな足音をさせ誰かが歩いてくる。
「お前は！二度も！何をやっているんだ！」
近づいていたのはアズール先輩で、隣にはジェイド先輩がニコニコと立っている。様子から察するにジェイド先輩がアズール先輩を読んだのだろう。
ジェイド先輩は楽しげな表情だが、アズール先輩はかなり怒っている。客にフロイド先輩が無礼を働いたと思っているんだろう。間違いではないが。
アズール先輩が来たことで安心感を覚え、涙が止まる。よほど反省しているのか、フロイド先輩はずっとごめんね、と謝っている。
そこにはいつもの怖さはなく、むしろしおれている様に見える。
「うちのフロイドがすみません。なんとお詫びして良いか…。」
「大丈夫…です…から…。」
先輩も私もこの事は大きくしたくないだろう。そう思い、大丈夫だと言い、事は収まった。
そして私は逃げるように自分の部屋へ戻って、気持ちを整理する。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 23人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：りん | 作成日時：2021年7月25日 16時
