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あれから随分と時間が経つが客足は途絶えず、先輩達は帰ってきていない。ちなみに私も料理を食べきっていない。
理由は簡単。量が多すぎるからだ。
冷める前に食べなければと使命感に襲われていたはずが、今では食べきらなくてはという違う使命感に変わっている。
料理はとうに冷めきっており、湯気の一つも見つからない。だが暖かい状態と冷めた状態では味が異なり、飽きないような味になっている。なんとも先輩らしい味つけだと一人で納得する。
「あれ？まだ食ってんの？」
前から声がする。仕事に行っていたフロイド先輩が帰ってきた。いつも少しはだけている寮服が、よりもっとはだけている。
先輩の方向に顔を向けるがその服のせいで直視できず、すぐに視線を下に落とす。
「は…はい…。すみません…。」
いつもの如く条件反射で謝ってしまう。それに先輩が意義を唱える。
「なんで謝んの？いーじゃん。元々多いな〜って思ってたし。」
そう言うとフォークを持ってきて、私が食べていた料理を食べ始める。よほど空腹だったのか、かなりの量だったはずの皿の上は綺麗に片付いている。
自分でも満足したのか、やっぱ俺って天才？なんて言いながら私の隣に再び座る。ここはホストクラブかなにかだろうか、と思うくらい先輩は手厚くサービスをしてくれる。
「ねー、なんで俺のこと見てくんねぇの？」
不意に質問が投げ掛けられる。その答えは簡単だ。服装のせいで見ることができない。ボタンは半分以上外れていて、下から数えた方が早いくらいだ。
「ふ…服がっ…。」
こんなことはっきりと言える筈がなく、大分濁して伝える。だがこれだけ言えば十分に理解してくれるだろう。
「あ〜…。なるほどね？」
先輩は自分でボタンをいつもの位置まで止め、こちらに向き直す。
「…だからそんな顔赤くなってんだぁ。」
先輩の左手によって顎を持たれ、強制的に上へ顔が行く。そのままの体勢で先輩の右手が私の喉を撫で、首全体を包み方こむ。
その表情は完全に捕食者のそれと一緒だった。
最初に首を絞められた記憶がよみがえり、体が震える。本能的に動けない。呼吸が速くなる。
抵抗してはいけない、と警告音が頭の中で鳴り響く。
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作者名：りん | 作成日時：2021年7月25日 16時
