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「稚魚ちゃんはオクタヴィネル寮生だからラウンジって分かるよね？」
「は、はい…。放課後…にカフェ…をやっているって…。」
ラウンジに向かうまでに会話をする。と言ってもフロイド先輩の質問に答えるだけだが。
質問に答えるまでに時間がかかりすぎたり、答えなかったりするとフロイド先輩の機嫌が悪くなる、と学んだ私は途切れ途切れではあるがしっかりと答える。
「覚えてたんだぁ。偉いねぇ。」
先輩が私の頭を撫で、微笑む。いつもと違い穏やかだ。
「着いたよ。案内するから、ついてきてね？」
「はい…。」
客として来るのは初めてだ。少し緊張する。
扉を開けるとレディーファーストなのか、私を先に行かせる。
だがすぐ後それなはない、とその考えを否定する。なぜなら私は男として先輩に見られているからである。
なら、どうして先に行かせたんだろうかと頭を悩ませる。まあ、いつもの気まぐれだろうと気にしなかった。
「はい、ここで待っててねぇ？」
ソファーに座らせられる。そして彼の言葉に首を縦に振る。
そういえば緊張からラウンジに入ってから一言も発さなかった。そんな私に先輩はそんなにソワソワしないの、と笑われながら言われた。
「ご利用は初めてでしょうか？」
横から現れた高身長の人にびっくりして、体を小さくする。何を隠そう、彼はフロイド先輩の兄弟のジェイド先輩だっからだ。無言で首を縦に振り、意思を伝える。
「初めて…。では、ここに来たのは誰かに勧められたんでしょうか。」
独り言のように聞こえるが、これは確実にここへ来た理由を知りたがっている。多分、契約しに来た人間だと思っているのだろう。
「あ、いえ…。えっと…フロイド先輩に…。」
そう言うと興味深そうに少し近づく。さっきより清々しい笑みで。表情と身長から正直言ってとても怖い。
「おやおや…。詳しくお教えいただけますか？」
私が断れないのを知って言っているな、とすぐに分かった。だが、隠す理由も無いので簡単に説明する。
「フロイド先輩…が教室に来て…くれて…。ここへ連れてきて…くれました…。」
短いが、伝わっただろうかとジェイド先輩を見ると面白い物を見つけたような、楽しい事がこれからあるような笑いをしている。
それをわざと目の前でしているのか、隠しているのか私には分からなかった。
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作者名：りん | 作成日時：2021年7月25日 16時
