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お昼が終わり、ようやく解放された私はふらふらと千鳥足で教室にたどり着く。
「だ、大丈夫…?」
そんな私の様子を察しエペル君は心配そうに訪ねてくれる。嬉しい。
今日一番の幸せだ。エペル君のおかげで午後も頑張れそうだ。
「うん、大丈夫だよ…。」
「良かった。何かあったら言ってね?」
エペル君が次々と言葉を投げ掛けてくれる。これは友達だと言っていいのだろうか、と期待してしまう。あっちも友達だと思ってくれていればいいなと願う。
そして、エペル君がまさかの衝撃的な言葉を発する。
「あ、そうだ。ジャッククンと話してみない?」
身体中に電撃が走ったような感覚だった。エペル君が仲良しの友達を作れて良かった、というのと紹介されても一言も話せないだろうという葛藤からくるものだった。
だが、彼の誘いを断ることはできず、静かに頷いた。
「エペルが言ってたロウって…コイツのことか?」
エペル君が名前を呼び、それに反応し私の目の前に立った狼の獣人。彼こそがジャックである。
身長が高く、表情も変わりにくいので威圧的に見え、怖く感じる。
私を見ると首元の匂いをかぎ、耳を動かす。
「うん。僕の友達のロウクンだよ。」
その言葉に感激する。ジャック君との話題に私を出してくれたことと、私を友達だと言ってくれたことにとても喜びを感じる。
「そうか。俺はジャック・ハウルだ。宜しくな。」
そう言った後にニカッと笑顔になり、手を差し出してくる。怖い印象が強かったが、意外と仲良くなれるかもしれない。
「ロウ…です。よ…よろしく…ね?」
どうすればいいか分からず戸惑ったが、とりあえず差し出された手を掴み握手をする。
その光景を見ていたエペル君はとても嬉しそうだった。ふふふ、と笑い声を漏らしていたほどに。
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作者名:りん | 作成日時:2021年7月25日 16時