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「久しいな、マドカ」

「大王様こそ、お変わりない様で」

先程の呂氏一行と大王側との挨拶が終わり、私は、玉座に座る現秦王、嬴政様に改めて挨拶をしていた。

私は、数ヶ月ぶりに極東の国、燕から自国である秦へと帰ってきていた。
今回帰国したのは、暫く魏へ赴いていた呂氏一行が帰国するということであり、蔡沢様と共に私も連れ戻されたからである。

そもそも、王弟である成蟜様が反乱を起こした時点で帰国しなければならなかったのだが、呂氏はあえて帰国しなかった。それ故、私たちの所にも偽情報が伝達され、帰国が遅れてしまった。

呂氏が今回帰国を遅らせたことについては確実に裏がある、に決まっている。


「先程はしてやられましたか、大王様」

「お前までそれを言うのか」

辞めてくれと言わんばかりに大王様は苦笑した。

先程の挨拶の際、昨夜起こった大王暗殺について、呂氏への処罰は不問となった。
大王側の文官は、皆それぞれに怨言を呈していたが、その言葉さえも呂氏に笑い事にされていた。

「もとよりお前は呂氏側の人間だろ?」

皮肉を込めて笑う大王様に対し、私は首を振った。

「私の主人はあくまでも先生です」

「ああ、そうであったな」

私の殿であり先生である、昌平君は呂氏四柱の一人だが、私には関係のないこと。
私が先生に買われた五歳の時から私の主人は先生ただ一人だけだ。


「それにつけても、何か良い知らせがあったのですか」

今の大王様はどこか楽しそうだ。

「ああ、中華統一に向け、友と仲間と共に、茨の道を進むことがこれほどまでに楽しいとはな」


「友と仲間、確か信という少年」

「ああ、」

大王様は微笑んだ。今まで笑った顔をみたことなどほとんど無かった。それほどまでに心強い仲間、友に出会えたと言うことなのだろう。

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作者名:たじつ | 作成日時:2022年10月8日 0時

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