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半ば強制的について行く羽目になった私は一番後ろでヒールを鳴らす。
たったの三センチでも私にとっては立派なヒールで、耳障りにならないこの音が私は好きだ。
毛利探偵事務所とコロンボはそんなに遠くない位置にある。
だから毛利さんも行きつけの場所らしい。
「紅茶でも飲んで待ってる?」
戻ってきたのは良いんだけど、依頼主はいない。
蘭ちゃんが連絡待ちの毛利さんに気を利かせて紅茶を勧めるている。
本当によくできた娘さんだ。
「…私もお手洗い借りようかな」
毛利さんとコナン君に続いて近づいてみると毛利さんの携帯に続けて連絡が入る。
コロンボに着いたから急いで来て欲しいとのことだ。
(行ったけど居らんかったのはあなたでしょうが)
自分のクライアントじゃないから心の中で悪態をつけていると背中を押される。
強い強い力強いから!
君さ、本当に力加減しようよ!
この前からずっと痛いよ!?
握力いくつだよ!腕力いくつだよ!!
じと目でコナン君を見つめるけど彼は気づく素振りなし。
はいはい、そうだと思いました。
私の事は完全無視なのにしっかり手を握ってるってどういう現象?
離してくださーい。
それは良いとして…この二人、分かってて何をやってるんだろう。
本当にコロンボに行くつもりなの?逃げられちゃうじゃない。
「おそらく…」
そのまま大人しく言うことを聞くのかと思いきやそうではなかったようで、安室さんがどや顔で推理を披露し始めた。
それに加勢するようにコナン君が割って入る。
言ってることは間違ってないと思うけど、その顔やめてほしい。
どこか癪に触るんだもの。
その時、嫌な音がした。
パァンと空気を裂く大嫌いな音。
急いで扉を開けると一人の女性が縛られた状態で、一人の男性が大きく口を開けて、それぞれ座っていた。
地べたに座っていた樫塚圭と名乗る女性の証言によるとこんな感じ。
ロッカーの鍵がどこの物か調べてもらうために事務所に訪れたが出迎えたのがあの便座に座っていた男性で、助手だと名乗ったそう。
そしてその後スタンガンで気絶させられて、気がついたらガムテープで拘束されてた…と。
そしてそしてトイレに近づいた私達をメールで追い出そうと思ったけれど気づかれてしまい、逃げ場を失ったので自ら命を絶った…と?
女性は涙を浮かべてそう言った。
へぇー。
「自分でねぇ」
ぽつりと呟いた違和感を発しなければ良かったと後悔する事になるだなんて、この時の私はまだ知らない。
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作者名:りん | 作成日時:2018年3月22日 22時